もてる技術のすべてを尽くしてファンモータの限界に挑む

熱を空気で運び出す Concept

日本電産のファンモータ

ノートパソコンやゲーム機、薄型テレビといった電子機器は、性能向上とともに消費電力も増えており、機器内で大量の“熱”が発生するようになりました。日本電産でファンとモータの研究・開発に長らく携わってきた竹本は、「家電製品でも内部を冷却するためのファンモータが必要になるケースが増えてきました」と説明します。

例えば、パソコンの処理速度を上げるには、その心臓部であるプロセッサー(CPU)に大量の電気を投入する必要がありますが、最終的には熱へと変化するため、この熱を外に運び出さないと、機器内の他の部品が壊れたり、パソコン自体が誤動作したりすることになるのです。

同じような理由から、薄型テレビやブルーレイレコーダー、きれいなグラフィックスを素早く変化させるゲーム機でも、ファンモータはすでに当たり前の装備品になっています。

さらに「ベストな冷却をするには、どのように冷却するかという目的に合わせて、ファンの羽根の形や枚数を変えたりモータの特性を選んだりしなければなりません」と竹本は語ります。1982年に軸流型ブラシレスDCファンの本格的生産を開始して以来、日本電産はファンモータの研究・開発・生産・販売に一貫して取り組んできました。

ゲーム機ファンで
トップクラスのシェア Product

動作音が小さく、小型ながら冷却能力が高い日本電産のファンで改良された現在のゲーム機で楽しむ様子

例えばゲーム機の場合、2000年代に入ると機器が発する熱が急速に増え、冷却用ファンモータに対する要求が高まりました。そこで小型ながら冷却能力が高いカスタム品を開発し、ゲーム機メーカーに納入しました。

さらに、そのゲーム機のモデルチェンジ後に「ファンの音がうるさくてゲームに集中できない」という声が寄せられるようになると、機器内部の設計も見直しました。

日本電産が開発したブロアユニットが採用されたスティック型掃除機を使用する様子

また、2016年に登場した国産のスティック型掃除機に日本電産が開発したブロアユニットが採用されました。「第1号の製品に使われているのは、直径が約60mmなのでV60という名前を付けたブロアユニットです。掃除機メーカー様はこのブロアユニットのサイズに合わせて機器本体を設計されましたので、高出力・省エネでありながら、細身ですっきりした形の掃除機ができあがりました」と竹本。

さらに、超小型の携帯電話基地局にも、日本電産の超薄型ファンの技術が生かされようとしています。これまでの携帯電話基地局は物置ほどのサイズでしたが、「2020年頃には街路灯、看板、信号機などに収まる超小型の携帯電話基地局が登場する」というのが通信業界の予測です。

小型化×高機能化した
ファン Device

小型化、高機能化した日本電産のファン

このように、ファンモータに対するニーズはさまざまです。お客さまからのあらゆる要求に応えようと、日本電産はカスタム品と汎用品の両方を作っています。

カスタム品は、特に高い機能が求められる機器用で、ゲーム機などに使われます。最先端の技術と製造方法が惜しみなくつぎ込まれるので価格は少し高くなりますが、競争力の高い家電製品や電子機器を生み出すには欠かせない要素です。

例えば、複雑な形状を採用した3次元羽根(3Dインペラ)。従来から自動車のターボエンジンなどに使われていた高性能の羽根です。

一方、さまざまな用途に対応できるのが汎用品です。日本電産の製品ではUltraFloシリーズがこれにあたります。日本電産は汎用品にもカスタム品並みの技術と製造方法を投入することによって、常に業界最先端のファンモータを生み出し続けています。

その取り組みから生まれた成果の一つが、ハードディスクにも採用されているFDB(流体動圧軸受)という技術を適用したUltraFlo FDBという新シリーズです。軸受にボールベアリングを使わないのでファンの振動は少なく、動作音もきわめて小さくなります。

また、 UltraFlo FDBシリーズでは一部のモデルに“不等配翼”を採用。羽根を軸に取り付ける位置を1枚ごとに微妙にずらすことによって、風量を犠牲にすることなく、風切り音を小さくすることができます。

ファンモータを超える
冷却に向けて Future

空気の流れと各点の温度を読み解く「熱流体解析」のイメージ

電子機器の高性能化にともなってますます重要になる冷却用のファンモータ。市場の期待に応えるべく、日本電産はさまざまな取り組みを進めています。

その一つが「サーマルソリューション」。ファンモータ単品の性能を高めるだけでなく、それを組み込む機器のデザインや部品配置までを含んだ包括的な提案をお客さまにお届けします。

また、研究・開発の質と効率を高めるために、スーパーコンピューターを駆使した最新のCAE(コンピューター支援エンジニアリング)を空気の流れと各点の温度を読み解く「熱流体解析」、動作音の周波数と大きさを計算で求める「音響解析」、軸受部の振動を調べる「振動解析」などに積極的に取り入れています。

ファンモータの技術を応用できる新しい領域、ドローンのイメージ

「ドローンも羽根とモータで飛んでいるわけですから、弊社がこれまでに培ってきた技術や設備を大いに生かせます」と竹本。

さらに、“ファンの限界を超える”検討も始まりました。「お客さまからは『もっと風を、もっと風を』と要求されるのですが、ファンによる冷却だけでは、いつか冷却性能が足りなくなることは目に見えています」(竹本)。水や空気を使った冷却手段にこだわらず、周辺技術を取り込んだ新しいソリューションを実用化するためにさまざまな方法を試しています。