成長し続け、尊敬される企業に。代表取締役社長 吉本浩之 成長し続け、尊敬される企業に。代表取締役社長 吉本浩之

会長・永守のスケールの大きさに
打たれ入社を決意

─その後、日産自動車のグループ企業(カルソニックカンセイ)に移ったのも「再建請負人」が求められたから?

まあ、そんな感じです。GEという会社は好きだったし「ここでガンガンやっていこう!」と思っていた時期でしたが、一方で、いつかは日本の会社に戻ろうと考えていましたし、軒並み落ち込んでいた日本の製造業を立て直したいという気持ちもありました。そこに「日本企業」「車」「ものづくり」「事業再生」…と色々な条件が揃った話が来たので「これは面白そうだ」と、乗ったわけです。
それで日本に戻って数年間かけてカルソニックカンセイを再生したら、今度は日産本社に呼ばれ「タイ現地法人の責任者をやってくれ」となった。これは再建プロジェクトというよりも、現地ビジネスを成長軌道に乗せる仕事でした。タイの現法は国内販売も輸出向け生産もやる大きな拠点ですが、全体をまとめる日本人のビジネスリーダーがいませんでした。それになれ、と言われてタイに行きました。

─日本電産に来る直前(2015年)は、タイで仕事をされていたわけですね。

ええ、タイに赴任して2年くらい。ちょうどいい感じに回り始めたときです。
それまで日本電産と仕事上での接点はありませんでしたが、私も京都出身で、日本電産は身近に感じていたし、商社時代から企業リーダーの本を読むのが好きで、永守会長の著作も全部読んで、すごい人だなとずっと思っていました。だから知り合いを通して「出張のついでにちょっと話しにおいで」と誘われた時は「面白そうだな」と。本でしか知らないカリスマリーダーに声をかけられたら、そりゃ感動しますよ。
といっても、すぐに転職する気はなかったんです。でも永守会長に会って話してみて、気持ちが変わりました。会長の仕事にかける情熱や、「この会社を世界一にしたい!」という志、そして人間のスケール。理屈抜きで打たれました。厳しい人だろうと思っていたんですが、会ってみたら、こんなに包容力のある、スケールのでっかい方だったのか、という印象で。それで日本電産に来ることを決めました。

日本電産トーソク:自動車部品や計測機器装置などの分野で独自性のある製品を提供しています。

「3現主義」で事業の課題を
素早く抽出する

─2015年3月に日本電産に入社し、翌4月にはグループ会社である
日本電産トーソクの事業再建を任されましたね。

トーソクは一応利益が出ていたのですが、日本電産の基準からするとまだまだ利益水準が低く、収益性を上げるためのアグレッシブな改革が必要でした。慣れた自動車分野なのでビジネスの中身はわかっていたし、これまでの人的ネットワークが生かせるなど、そういう意味ではとっかかりやすかったです。

─永守会長の話では、これには後継者選びのための「試験」という狙いもあったと聞いていますが?

いやいや、当時は全くそんな事は知らなかったし、意識もしませんでした。そんな余裕なんかないですよ(笑)。とにかくこの会社を再建する、そこに全力投球しただけです。
事業再建というのは、製品分野が違ってもやることは基本的に同じ。まずはその会社がどういう課題や問題点を抱えているのかを知ることです。これを現場・現物・現実の「3現主義」でやる。現場に出向いて、現物に触れ、社員一人ひとりと話して現実を肌で感じる。これをしっかりやれば短期間で課題・問題点を見つけ出すことができます。たとえば役員が一枚岩になっていないとか、経営ビジョンがおかしいとか、自分ではやれているつもりでもものづくりがしっかりできていないとか。そういった問題点を2週間くらいで当たりをつけ、1ヶ月で課題を抽出し、次の1ヶ月で再生を段階的に進めるための工程表を作り、実行していくわけです。

─一般的な再生プロジェクトに比べて、非常にスピード感があります。

それぐらいの速さでやらないとだめでしょう。自分が元々「いらち」というのもありますが、このスピード感が日本電産の大きな強みだと思います。

永守会長との共通点と違い

自分ではよく分かりませんが、永守会長とは「いらち」のところや、すべてにおいて細かいところなんかは似ているかもしれません。トーソクの事業再生のとき、会長は最初「じっくりやったらいいから」とか言っておきながら、行ったら2日目から電話してきて「おい、どうなってる?」(笑)。まあ、そのスピード感が日本電産の強みですが。
違うところは「ゼロからビジネスを創造する力」。これは大きく違います。以前新聞に「再建請負人」と書かれたことがありますが、ある程度当たっていますね。一度ダメになった会社や事業を再生することの方が、全くのゼロからビジネスを創出するよりも好きだし、得意だと思います。あとは人間的な大きさですよね。器というか、包容力というか、これが全然違う。これに関しては、自分でこれから作っていくしかないと思っています。