省エネ・創エネで切り拓く日本電産が見据える脱炭素社会 省エネ・創エネで切り拓く日本電産が見据える脱炭素社会

佐藤 明

「持続可能な社会の実現」が全世界の目標となっている現在、企業が果たすべき社会的責任(CSR)もこれまで以上に重要で大きなものになっています。日本電産グループは様々な社会課題の解決に貢献する技術・製品・サービスの提供に努めると同時に、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の各分野における取り組みを強化し「100年後も社会から必要とされる企業」を目指しています。

「サステナビリティ(持続可能性)」がCSRのキーワードに

日本電産グループCSR基本姿勢

SDGs

─最初にCSR(企業の社会的責任)に対する日本電産の基本的な考え方を教えてください。

一昔前は「企業のCSR」というと、通常の事業活動の他に実施している何らかの“社会貢献活動”、をイメージする方も多かったと思います。しかしCSRは本来、企業活動の本質に関わる非常に重要なテーマであり、経営戦略でもあります。
CSRを考える上でのキーワードとも言えるのが「サステナビリティ(sustainability:持続可能性)」という概念です。2015年に国連で採択されたSDGs※に象徴されるように、「持続可能(sustainable)な社会の実現」は、いまや全世界共通の目標になってきています。100年後を生きる自分たちの子孫が豊かに暮らせるような社会のあり方を、各国政府はもちろん民間企業も一緒になって、世界全体で考えていこうというのが国際的なメガトレンドになっています。
そうしたなかで日本電産グループは、社是※にもあるように「全世界に通じる製品を生産し、社会に貢献する」事業を展開し、「100年後も社会から必要とされる企業」を目指して様々な事業を展開しています。これはまさに「サステナビリティ」の考え方に沿った経営だと言えます。社会が持続的に発展していくためには何が求められるのかを真剣に考え、それらを一つひとつ誠実に実行することによって、自らも社会に必要とされる存在であり続けようとする。それが日本電産グループのCSRにおける基本姿勢です。

※SDGs(Sustainable Development Goals)…持続可能な開発目標。2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成される。

※日本電産「社是」全文…我社は科学・技術・技能の一体化と誠実な心をもって全世界に通じる製品を生産し社会に貢献すると同時に会社および全従業員の繁栄を推進することをむねとする。

世界的に拡大している「ESG投資」

─CSR活動は、企業の成長性や企業価値の向上にも関係するのでしょうか?

もちろんです。企業がどのようにCSRに取り組むかは、投資判断においても重要な指針になっています。欧米ではかなり前から「SRI(社会的責任投資)※」という投資手法が浸透しています。これは企業がどれだけ収益をあげたかといった経済性だけでなく、環境問題や人権問題など様々な社会課題への取り組みも投資先としての選定基準に含めようという考え方です。言い換えれば、「CSRを果たせない企業には、将来的な成長が望めない=投資する価値がない」ということにもなるわけです。
こうした考え方は、現在では「サステナブル投資」あるいは「ESG投資」と呼ばれるものに発展しています。ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の頭文字をつなげたもので、キャッシュフローや利益率などの財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンスの各領域における「非財務情報」も加えて投資判断を行う手法です。
すでに欧州では資産運用の大部分がこのESG投資になっているとも言われています。日本でも、2017年に世界最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、ESG投資の運用を1兆円規模で始めたことで、企業のESG対応が注目されています。私たちも財務的な業績向上に努めるだけでなく、ESGへの取り組みを更に強化し、同時に積極的に情報を開示することで投資市場の理解を得ていくことが必要だと認識しています。

※SRI(Socially Responsible Investment)…企業への投資判断材料として経済性の評価のみでなく、企業の環境適合性・社会適合性の評価、すなわち企業の社会的責任(CSR)を加え、企業のパフォーマンスを分析し投資先企業を決定する投資行動。

事業を通し、社会課題の解決に貢献する

─「持続可能な社会の実現」に向けて、日本電産グループは具体的にどのような形で貢献しているのでしょうか?

これは大きく「事業」による貢献と、「事業外活動」による貢献に分けることができます。
事業、つまり製品やサービスによる貢献には色々なものがありますが、最も分かりやすいのはモータによる地球環境への貢献でしょう。モータは「回るもの、動くもの」に不可欠な部品であり、人々の豊かで快適な暮らしを支えています。一方でモータは世界の電力の約50%を消費する存在でもあり、地球環境保全の観点から高効率化・省エネ化が強く求められています。たとえば全世界のモータのエネルギー効率を10%改善すれば100基もの原発を不要にできると言われています。当社は世界No.1の総合モーターメーカーとして、ブラシレスDCモータに代表される高効率モータを開発し、世界に広く普及させることで、地球温暖化問題やエネルギー問題の解決に貢献しています。
いま日本電産グループは「クルマの電動化」、「ロボット活用の拡がり」、「家電製品のブラシレスDC化」、「農業・物流の省人化」、「5Gによるデジタルデータ爆発」という技術革新の“5つの大波”をとらえることでさらなる成長を目指していますが、見方を変えれば、それらはすべて世界規模での社会要請に応える取り組みでもあります。すなわち、事業戦略が「重要な社会課題の解決」にしっかり繋がっている、ということです。

5つの大波
環境授業

スピードスケートチーム「日本電産サンキョースケート部」

たとえば「クルマの電動化」の大波に対しては、この4月に中国で「電気自動車向けトラクションモータシステム」の納入が始まりました。これが世界に普及していけば各国の環境問題の解決に寄与するはずです。また当社が先進運転支援システム(ADAS)向けに提供する車載カメラやレーダーなどの製品は「事故のない社会」の実現に役立つものです。「ロボット活用の拡がり」や「農業・物流の省人化」の大波に対しても、電動車いす向けのブラシレスDCモータやドローン用モータ、パワーアシストスーツ向け超偏平アクチュエータなど、様々な製品・技術で社会のニーズに応えています。他にも再生可能エネルギーの普及推進、僻地の電力環境の整備に役立つ電力ソリューションなど、数えあげればきりがありません。どの事業も「持続可能な社会の実現」に寄与する新しい価値を生み出せるからこそ持続的な成長が望めるわけです。
一方、事業外活動による貢献については「環境(自然環境保全)」、「教育」、「災害対策」、「社会福祉・地域貢献」、「スポーツ」の5つを重点分野と位置づけ、注力しています。たとえば「スポーツ」では、スピードスケートチーム「日本電産サンキョースケート部」の活動サポートを通じてスケート競技の発展を支援し、世界トップレベルの選手の輩出によって人々に感動を届けています。「教育」に関しても、子どもたちに地球環境の大切さを考えてもらうための環境授業や、モータ製作などを体験するものづくり教室を国内・海外で実施しています。2017年には京都大学の工学研究科に当社の支援による寄附講座「優しい地球環境を実現する先端電気機器工学」を開設するなど、積極的に活動を広げています。