2-3-1 交流整流子モータの構造と特徴

直巻モータの電流と回転方向
                 図2.33直巻モータの電流と回転方向
(CW=clockwise:時計回り)

1章で、電磁石を用いるDCモータを見ました。そこでは、分巻、直巻、他励の各結線方式がありました。このうち、直巻モータに交流電源をかけるとどうなるでしょうか?

図2.33(a) に示す状態でモータが回転しているとき、モータへ印加する電圧の極性を反転させてみます もし、同図(b) のように電磁石の極性が変わらなければ、回転子に流れる電流が逆になって、ロータは逆転します。

ところが、直巻モータでは、同図(c) のように電磁石の極性も逆転するので、回転方向は変わりません。

つまり、このモータには、交流電源でも回転を続けられるという特徴があります。

しかし、DC用のモータとして設計された直巻モータに交流をかけると、一つ不都合が発生します。それは、ステータ鉄心に鋳物や軟鋼を使ったモータでは、鉄心内部に電磁誘導による電流(これを渦電流と呼ぶ)が発生して、大量に熱が出ることです。そこで交流で回転する整流子モータでは、誘導モータと同じように、鉄心を珪素鋼板による絶縁成層構造にします。

このようなモータは、交流・直流いずれでも運転できることから、ユニバーサルモータとも呼ばれます。

しかし、実用上は、専ら交流で運転されるので、交流整流子モータと呼ばれます。

特徴と欠点

交流整流子モータの使用例(電気ドリル)
                 図2.34 交流整流子モータの使用例(電気ドリル)

交流整流子モータには、次の特長があります。

  • 家庭用AC100Vで運転できる
  • 誘導モータより高速回転が可能
  • 負荷が増えると回転速度が下がり、トルクが増加する
  • 起動トルクが大きい

このような特性から、家庭電気製品では軽量大出力が必要とされる、電気掃除機、電気ドリル(図 2.34)のような工具、あるいは誘導モータより高速回転を必要とする、ミキサーや、コーヒーミルなどに用いられます。

一方、交流整流子モータには、

  • ノイズが出る
  • ブラシの寿命のため常時運転には向かない

という欠点もあります。

分巻の交流整流子モータはないか

直巻整流子モータは交流でも使えますが、分巻モータも交流で使えるのでしょうか。

界磁を電磁石にしたとき、界磁コイルのインダクタンスは、電機子のインダクタンスに比べて大きい値になります。ここに交流を流すと、電機子に比べて界磁コイルの電流位相に遅れが生じます。このため、電機子に電流が流れているときは磁束が少なく、磁束が大きいときには電機子電流が流れていない状態になり、十分なモータトルクが発生しません。

この点、直巻コイルの場合は、界磁コイルと電機子コイルが直列になっており、両者の電流は一致しますので、このような現象は起きません。交流整流子モータが直巻構造なのはこういう理由のためです。

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