成長し続け、尊敬される企業に。代表取締役社長 吉本浩之 成長し続け、尊敬される企業に。代表取締役社長 吉本浩之

福永 泰

パソコン、家電、車、産業用ロボットなど、あらゆるモノに搭載されている日本電産のモータ。そのモータにマイクロコンピュータ(マイコン)を内蔵した「インテリジェントモータ」の開発が進んでいます。インテリジェントモータは、モータの回転を制御するだけでなく、外部と通信でつながり、モータが「自ら考え」、「会話」し、「協力して動く」ことも可能な、いわば“知性”を持ったモータです。日本電産は年間30億個以上生産しているモータを、2025年までにすべてインテリジェントモータに置き替えていく計画です。その近未来にはどんな社会が待っているのでしょうか。

インテリジェントモータ®とは?

─インテリジェントモータとは、どんなモータなのか教えてください。

機関車同士が会話する幼児向けのCGアニメがありますよね。同じようにモータとモータが会話するというのが、インテリジェントモータのわかりやすいイメージではないかと思います。
一つのモータが「ちょっと油切れになって疲れたよ」とメッセージを出すと、別のモータが「じゃあ、その分、私が対応するよ」とお互いに会話する。そうすることで、例えば工場では生産や搬送に関わる機器が相互に会話し、より効率的に稼働することができます。周囲の状況を読み取り、状況に応じてモータ自身がオペレーションをしてくれる、そんな“知性”を持ったモータがインテリジェントモータなのです。
また、モータ同士が会話するだけでなく、モータを外部と通信でつなぐことで、外からの指令を受けて動くことも可能です。以前からこの機能を持つモータはありましたが、その機能をさらに進化させることで、帰宅前にエアコンの電源を入れるなど、外出先から家電を操作するといったことができます。
こうしたモータの進化によって暮らしは便利になりますし、さまざまな機器の自動化が進み作業が効率化されることで無駄なエネルギーの使用を抑えることもできます。

─そのような「相互に会話し、周辺環境に応じて自らオペレーションする」モータは、
なぜ今、技術的に可能になったのですか?

実はマイコンを内蔵したモータというのは、かなり前からありました。例えば、1970年代に登場したマイコン内蔵ジャー炊飯器は、モータが炊飯量に応じて火力を調節するものでした。しかし、当時のマイコンの処理能力は8bitと非常に低く、モータの回転を制御するくらいしかできなかったのです。
しかし、現在開発しているインテリジェントモータに搭載されているのは、32bitの処理能力を持つマイコンです。32なんて8の4倍じゃないかと思うかもしれませんが、32bitは2の32乗なのです。したがって2の8乗と2の32乗では、その処理能力は格段に違います。価格も、30年前に30億円したコンピュータと同じ性能のマイコンが2025年には50円で買えます。さらに、軽量化・小型化も進み、高性能なコンピュータを安価にモータへ搭載できるようになってきたことが、“知性”を持ったモータを可能にしているのです。

─日本電産はいつからインテリジェントモータを開発しているのですか?

「インテリジェントモータ®」という商標は、2007年に登録しました。その後、2012年頃から本格的にマイコン内蔵モータの開発に注力し、モータそのものをマイコンで制御するインテリジェント・ドライブ技術を確立しました。この技術により、モータに内蔵されたマイコンが電圧・電流やモータの回転数を制御して負荷を推定し、最適な運転状態でモータを駆動させることが可能になりました。
日本電産がいち早くモータのインテリジェント化に成功したのは、モータだけでなく、ドライバ、センサなどモータのインテリジェント化に必要な関連部品をグループで保有していることが大きいですね。
製品第1弾としてリリースされたのが、2017年4月に発売された「ATOM」というコミュニケーション・ロボットの中に組み込まれているインテリジェントモータです。(コラム参照)

インテリジェントモータを搭載した
コミュニケーション・ロボット
「ATOM」が誕生

「ATOM」は、日本初の進化するキャラクター型コミュニケーション・ロボットで、あの手塚治虫氏の「鉄腕アトム」をモデルに誕生しました。最新の人工知能(AI)を搭載し、家族の顔を覚えて会話をし、その内容もレベルアップしていきます。2017年4月に創刊された『週刊 鉄腕アトムを作ろう』(講談社発行、全70巻)に、毎号パーツが付属し、読者が組み立てて完成させていきます。「ATOM」の滑らかな動作を可能にしているのが、日本電産グループの日本電産セイミツと、日本電産中央モーター基礎技術研究所、富士ソフトが共同開発したサーボモータです。
モータは全部で18個搭載され、外からの指令どおりに腕や足を動かすことが可能になります。
今後、モータがさらにインテリジェント化されていくと、目から入ってきた情報をもとに、壊れやすいモノを壊さずに掴むといった非常に高度な動きが可能となります。より人間に近い動作ができるコミュニケーション・ロボットが登場すると、家庭にも普及するでしょう。