2013年度特集 - 100年後もなくてはならぬ企業であるために

1. モータで暮らしと環境に貢献

これまでも、これからも原点は「技術力」

「回るもの、動くもの」に欠かせないモータは、IT機器、自動車、家電製品、産業機械など広い分野で産業の発展と豊かな暮らしを可能にしています。日本電産グループは、より高い技術で、暮らしに役立つとともに環境負荷の低減にも貢献する製品を供給し続けたいと考えています。

豊かな暮らしと地球環境の両立のために

19世紀初めに誕生したモータは、近代工業発展の原動力となりました。今では世界の産業のみならず、私たちの家庭にあるあらゆる電気製品に使われており、モータは世界で発電される電力量の約50%を消費していると言われています。
今日、新興国の経済発展や環境問題への配慮等から世界的な電力不足の問題があり、より効率の良い電力使用のあり方が問われています。
つまりモータは私たちの豊かな暮らしになくてはならないものであると同時に、地球環境のサステナビリティ※1に大きな影響を与えるものでもあるのです。
「世界No.1の総合モーターメーカー」を目指す当社は、エネルギー効率の良いモータを供給することで少しでも節電と環境問題の解決に貢献したいと考えています。


サステナビリティ
持続可能性。経済や社会など人類の活動が将来に渡って持続できること。

IT機器の発展とともに

当社は様々な分野へのモータ供給を通じて、もっと快適な暮らしをしたいという社会のニーズに応えてきました。1973年7月に誕生した当社は、1980年頃のパソコン黎明期から、パソコンやサーバーに使われるハードディスクドライブ(HDD)用のブラシレスDCモータを市場に供給してきました。
今日、パソコンの利便性や快適性は一時代前とは比較にならないほど進化しています。HDDの記憶容量を大きくしたい、パソコンを軽く薄くしたい、少ない電力で動くようにしたいと次々に生まれるニーズに対し、当社はモータの回転精度を高めると同時に軽量化と高効率化で応えてきました。
この過程で当社が実用化に成功したのがFDB(流体動圧軸受)という技術です。従来、モータの軸受に使われていた金属球(ボールベアリング)の代わりに特殊な潤滑油を用いる技術で、金属同士の摩擦がなくなりモータの回転速度と精度を飛躍的に向上させることができます。また金属部材が少なくなるため軽くすることもでき、エネルギー効率も向上します。
このようなモータを構成する部品の技術向上が、より少ない電力で高速回転する軽量・高性能・高効率なHDD実現の要となっているのです。

自動車の環境性能を高める省エネ型モータ

1990年代中頃、当社は自動車に搭載されるモータの開発に着手しました。
当時、自動車メーカーは燃費の改善と環境負荷の低減のためにパワーステアリングの駆動方法を従来の油圧式から電動式(EPS)に切り替えることを検討していました。当社のEPS用モータは、小型軽量でエネルギー効率に優れており、自動車の燃費向上とCO2排出量削減への寄与が大きいと評価されました。最初に欧州の自動車メーカーに採用され、現在では日本・北米・中国などの自動車メーカーにも幅広く採用されています。EPSは油圧式に比べて約5%の燃費向上が見込まれるため、引き続き市場の拡大が予想されます。

また、燃費向上、環境負荷低減、安全性強化の観点から自動車に搭載されるモータの種類と数量は増加傾向にあり、現在では一台に40~60種類、個数にして60~100個のモータが使われています。当社はEPS用のほか、エンジン冷却用、座席調節用、ブレーキ補助用を含む20種類以上の自動車用モータを供給しています。世界の自動車に当社の省エネ型モータを提供することで、自動車から排出されるCO2など環境負荷の低減に貢献したいと考えています。

変化の時代へ技術力強化の布石

これまで当社は、「環境」「快適」といった様々な社会の要請に応じ、より高効率・高性能のモータを生み出す努力を続けてきました。 近年顧客ニーズの変化は激しく、製品のライフサイクルも以前に比べて極端に短くなってきています。従来の携帯電話からあっという間にスマートフォンに主流が移り、パソコンに変わってタブレット型端末が大きく伸びています。このような変化の時代では、顧客のニーズがどのように変わっても柔軟に対応し新しい製品を生み出す技術力が重要となります。

技術と言っても製品個別の設計・生産技術から、要素技術のような基礎技術まで様々ですが、変化への適応という点では基礎技術がより重要であるといえます。
前に述べた通り、当社が主力とするHDD用モータでは、要素技術としてFDBという全く新しい軸受の実用化に成功しました。FDBは低振動・低騒音の高速回転を可能にすることから今では冷却用ファンモータとして薄型パソコンやタブレット型端末に採用されており、自動車の座席用やデータセンターのサーバー用にも採用が検討されています。
基礎技術の優位性を高めることは、最終用途や市場の種類に限定されることのないものづくりを可能にします。当社は、未来のニーズに対応する土台として、こういった基礎技術の強化を目指しています。

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