2022年度特集 - 統合報告書2022

日本電産の歴史

「世界No.1の総合モータメーカー」として、
社会のニーズを捉え、事業の多角化による成長を実現

創業1973年

日本電産株式会社設立

1973年7月23日、代表取締役会長の永守重信(当時28歳)は「世界一になる」との思いのもと、仲間3人と京都市西京区に日本電産株式会社を設立、小型ACモータの製造・販売で事業をスタートしました。
当時は国内の顧客開拓が難航したため、飛び込みで米国の有力顧客を中心に営業していました。

創業当時の永守現代表取締役会長
創業当時の永守現代表取締役会長
創業の同士3人
創業の同士3人
桂工場
桂工場

ブラシレスDCモータとの出会い

学生時代、永守は静音性に優れ長寿命、小型化が可能なブラシレスDCモータに惹かれて研究に没頭。しかし、当時はまだ市場が小さく魚群探知機等に実用化されるのみでした。
当社は米国の電気機器メーカーから依頼を受け、ブラシレスDC技術を用いたダイレクトドライブ方式※1のハードディスクドライブ(以下、HDD)用モータの開発に成功し、1979年に量産を開始。ダイレクトドライブ方式のHDDモータはHDDの小型化や高容量化に寄与し、HDDはコンピュータの記憶装置として急速に普及しました。以降、ブラシレスDCモータは当社事業の柱となり、当社はそのトップメーカーとしてIT・車載装置から家電に至るまで幅広い市場で優位性を確立しています。

※1 ベルトドライブ方式とダイレクトドライブ方式
当時、HDDの駆動にはACモータが使われており、ベルトによってスピンドル(精密回転軸)を回転させるベルトドライブ方式が主流でした。主に大型コンピュータ用の記憶装置として使用されており、コンピュータを一般家庭へ普及させるためにHDDの小型化、記憶容量の増大が求められていました。それを可能にしたのが、スピンドルとモータを一体化したダイレクトドライブ方式のHDD用モータであり、当社はその開発・実用化において最も主要な役割を果たしました。

成長の牽引役、M&A

当社は創業から2022年10月までに68件のM&Aを行っています。49年の歴史の中でM&Aを集中して行った時期は2つ。1995年~2003年、HDD用モータの軸受が流体動圧軸受(以下、FDB)※2へ移行するにあたり、17件のM&Aを通じてFDBの開発や量産に必要な生産技術を取得しました。そして2010年~2020年、HDD市場が縮小した時期にHDD用モータ主軸の経営体制から脱却すべく、主に車載、家電・商業・産業用の分野で39件のM&Aを行いました。当社は、技術や人を育てるための「時間を買う」という発想に基づいてM&Aを活用し、「技術の変化」と「市場の変化」を乗り越えてきたのです。

HDD用モータの軸受にはボールベアリングが使われていましたが、1995年頃からHDDの高容量化に伴いモータの回転精度を高める必要がありました。軸受にFDBを用いる研究がなされていましたが、量産に至るベアリングメーカーはありませんでした。必要とされるHDD用モータを供給するには、当社はFDBを一から開発・生産する必要があったのです。それまではベアリングを外部から調達し、HDD用モータに組み立てていたので、FDBを一から開発するのは大きな挑戦でした。そのため、FDBの開発・生産に必要な技術を持つ企業を買収しました。例えばトーソクは高い計測技術を、京利工業やコパルはモータコアを打ち抜くプレス技術を持っていました。三協精機はFDBの技術で先行し、フィリピンに工場を構えていましたが、量産が計画通り進んでいませんでした。当社はこれらの技術、設備、エンジニアをM&Aで取得することで、ボールベアリングをFDBに置き換えたHDD用モータの本格的な量産を2000年から開始し、高い市場シェアを維持することができました。

※2 流体動圧軸受(Fluid Dynamic Bearing)
軸受と軸の間にオイル等の液体を介し、軸の回転によって発生する液体の動圧によって軸受から軸が浮揚し、なめらかに回転します。従来ボールベアリングが使われていましたが、流体動圧軸受に移行することにより低騒音、低振動が可能となり、HDDの更なる高密度化、大容量化に寄与しました。

FDBを取り入れたHDD用モータの量産が成功するかどうかは、HDD用モータが事業の主軸であった当社にとって非常に重要であり、大きな挑戦でもありました。そのため失敗した場合に備えて、HDD用モータ以外の分野でM&Aを行い、事業の多角化を図りました。1998年の芝浦電産や2000年のワイ・イー・ドライブは家電・商業・産業分野へ進出する足掛かりとなりました。パワーステアリング用モータについては参入障壁が高く、顧客層が拡大できずにいましたが、2006年に仏ヴァレオのモータ部門を買収することで一機に商流が広がりました。

HDD市場の減少を受け、当社はそれまで培ってきた技術を活かして更に成長を目指せる車載、家電・商業・産業用の分野においてM&Aを活用することで事業多角化を行いました。車載事業においては当社の車載モータとM&Aで取得した技術とのシナジーを追求し、付加価値が高いモジュール品とシステム品の開発に着手しました。例えば、当社で生産する電動パワーステアリング用モータと、2014年に当社グループとなった日本電産エレシスの電子制御ユニット(ECU)を一体化し、小型・軽量化、騒音を最小限に抑えられるパワーパックを開発しました。また、電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」はインバータの開発を日本電産エレシスが担当しています。
モータ単体の製販からモジュール品やシステム品の製販に移行することで、ティア2部品メーカーからティア1部品メーカーへの転換を図りました。
当社は市場が縮小するHDD用モータに執着せず、車載、家電・商業・産業用の事業にリソースを分配することで危機を乗り越え、成長を続けました。

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