ソリューション事例

振動キャンセル機能「TiltAC」

二重サスペンションとアクチュエータによって±6度の傾きを補正
ビデオカメラへの搭載で画質劣化無しでブレ補正が可能に

衝撃や振動が加わる環境下において、搭載したデバイスの姿勢を静止させるTiltAC(Tilt Actuator Control:傾き駆動制御)と呼ぶメカニズムを開発しました。デバイスを搭載する可動部にジャイロセンサを備え、その出力が常にゼロとなる状態を保つものです。すなわち可動部に傾き変位(角速度)が発生しないようにアクチュエータの動作を精密に制御することで、メカニズムの初期姿勢を維持します。これまで日本電産サンキョーが培ってきた精密サーボ技術、VCM(Voice Coil Motor)技術などのコアコンピテンシーがそこに結集されています。

TiltACシステムの構成
TiltACを組み込んだ広角ブレ補正用メカ構造
(イメージ図)

例えば、このTiltACに小型のカメラモジュールを搭載した場合、本体の“揺れ”や“動き”による影響を大幅に低減した動画や静止画の撮影を可能とする、ブレ補正カメラを実現することができます。
デジタルカメラやビデオカメラなどの民生品においては、すでにさまざまなブレ補正技術が実用化されています。レンズあるいはCMOS撮像素子をシフトして光軸を映像の中心部に維持するOIS(Optical Image Stabilizer)方式、撮影された映像の一部領域を切り出すデジタル処理によってブレを補正するEIS(Electronic Image Stabilizer)方式などが代表的です。

しかし、これらの既存技術には原理的に画質の劣化が避けられないという問題があります。例えばOIS方式では、レンズとCMOS撮像素子の位置関係がブレ補正動作によって理想状態から遠のいてしまうため、撮影した映像の特に周辺部分に光学的な劣化(画像歪み)が発生します。また、EIS方式ではCMOS撮像素子が本来持っている有効画素エリアをフルに生かすことができません。いずれにしてもOIS方式やEIS方式において実用性を発揮できるのは、“手ぶれ”など傾き変位が±1度くらいの範囲に限られます。

これに対してTiltACは、レンズからCMOS撮像素子までカメラモジュール全体の姿勢が変化しないように維持制御されるため、±6度の大きなブレ角度に対しても画質を損なうことなくブレ補正された映像の撮影が可能となります。

これにより具体的にどんなメリットが生まれるかというと、例えばアクションカメラのように激しく揺れ動く撮影環境でもブレ補正を効かせることができます。要するに動き回る状態で撮影するためにブレが発生していたあらゆるカメラがTiltACのターゲットとなるのです。趣味やスポーツのみならず警備員やプラントの保守作業員が装着するウェアラブルカメラや監視カメラなど、多様な業務用途にもニーズが広がっていくと考えられます。

ターゲットとするカメラ領域の拡大。TiltACを組み込んだカメラは、大きなブレ確度とブレ周波数にも対応する。

 

このようにTiltACは画期的なブレークスルーを成し遂げましたが、逆の見方をすると、これまで市場に例を見ない新しいコンセプトの製品だけに、その活用価値を世に広く知らしめ浸透させていく必要があります。アクチュエータのような要素部品レベルの優位性をアピールするだけではインパクトが弱く、訴求効果は限定的です。

そこで日本電産サンキョーは、広角ブレ補正の効果を実証すべく、ビデオカメラという製品の形でTiltACの技術を市場に投入する予定です。アクションカメラとして自転車やオートバイに装着できるようにするほか、ロボットや車両への搭載などの幅広い用途を想定しています。そして今後に向けては、IoTやウェアラブル用途に適した製品ラインアップの拡大も検討しています。

また、現在商品化を進めているカメラは、ピッチ(水平方向の回転)ならびにヨー(垂直方向の回転)の2軸でブレ補正を行うTiltACの技術を実装したものですが、次のステップとしてロール(光軸方向の回転)の補正まで可能な3軸ブレ補正TiltACの開発も進めています。同時に取り組んでいるロバスト性向上との相乗効果を発揮させることで、広角ブレ補正技術の認知度を高めていく計画です。

この振動キャンセル機能であるTiltACに搭載できるのはカメラモジュールだけではありません。レーザーモジュールやマイクロ波発振モジュールを搭載すれば、レーザー光やマイクロ波の出射ビームを最小限のブレで遠距離まで正確に狙いを定めて送信できる装置を実現することも可能です。TiltACの応用分野は限りなく広がっていきます

TiltACを組み込んだ広角ブレ補正用メカ動画。ブレや振動に対してセンターは動いていないのがわかる

開発者からのコメント

TiltACの最大の特長は、±6度というかつてない大きなブレ角度に対しても補正を効かせられる点にあります。ただ、その数値だけを示しても、お客様は具体的にどの様な用途に使えるのかイメージできません。そこでデモ用のカメラを試作し、展示会で実際にTiltACがどの様な効果をもたらすのか、ブレ補正の様子をご覧いただくことにしました。今後も市場・顧客ニーズを満足させる為に更なる開発展開を進めて参ります。

Nidec Group Search