未来への取り組み

モータのエンコーダレス位置検出・制御技術

エンコーダが無くても正確にモータ制御できる?

ステッピングモータを始めとする既存のモータから、大きな省エネ、軽薄短小を実現するブラシレスDCモータへの置き換えに注力してきた日本電産。ところで、モータを目的の位置にぴったりと合わせる、あるいはモータの回転ムラを無くすにためにはどんな部品が必要かご存知でしょうか?答えは、エンコーダです。モータを正確に回すためにはエンコーダは必要不可欠な部品です。ところが、このエンコーダ、小型化が難しい上に、実にモータ原価の約20~40%を占めるほど高価、というデメリットがあります。 そこで日本電産は、「エンコーダを使わなくても正確に回転制御できるモータ」を開発しました。果たしてどうやって実現したのでしょうか?そんな疑問にお答えすべく、今回開発した「モータのエンコーダレス位置検出・制御技術」をご紹介します。

ホールセンサの「ばらつき」を学習して精度向上

現在、ほぼすべてのブラシレスDCモータにはホールセンサが搭載されています。ホールセンサは、エンコーダに比べて非常に安価で小型化できるというメリットがあります。当社の従来のブラシレスDCモータでは、ホールセンサに加え、位置誤差:機械角0.9°のエンコーダを搭載していました。

              ▲ロータ (マグネット) とホールセンサ搭載基板の構成(イメージ図)

一般的に、ブラシレスDCモータはホールセンサを使ってロータ (マグネット) の回転位置を検出しますが、マグネットの着磁やホールセンサ取り付け、感度などの「ばらつき」が誤差となり、正確な位置検出が困難です。日本電産は、この「ばらつき」を補正するアルゴリズムを開発し、ホールセンサのみで位置制御の精度を向上させることに成功しました。これにより、エンコーダそのものを無くすことができます。

従来のモータ制御は、誤差のない理想的なモータモデルの上でモータ制御を行っていたため、理論上は正確に制御出来ているように見えても、実際には上記のようなホールセンサの「ばらつき」等によるモータの個体差により「ズレ」が発生してしまいます。このため、従来のブラシレスDCモータでは回転ムラや精度の低下が見られました。

これに対し日本電産は、モータに個体差があることを前提としたモータモデルを構築しました。本来、モータ制御には不都合なモータの個体差を利用して、ブラシレスDCモータ上のホールセンサの信号をソフトウェアで学習することで、モータ軸の角度位置を検出するアルゴリズムを考案したのです。

      ▲ホールセンサ信号の「ばらつき」をソフトウェアで補正

具体的には、ホールセンサ信号の「ばらつき」をソフトウェアにより統計処理し、補正を行います。補正アルゴリズムの原理は、検出したホールセンサ信号がどんなにばらついていても、モータが360°、つまり1回転すれば、次の1回転でも全く同じ信号波形を検出できる、という仮定に基づいています。まず、1回転1周期分のホールセンサ信号を抽出します。何度か回転を繰り返すことで、正確な「ばらつき」具合を把握 (学習) します。次に図のように、複数のホールセンサ信号が描く波形の交点を結んで出来た「線分」を接続して1本の折れ線を作り、信号波形の高さと中心線を揃えます (正規化)。 このように「線分」に補正をかけることで、先ほどの1本の折れ線をほぼ一直線に揃えることが出来ます。以上の補正アルゴリズム「線分接続法 (CLH)」による 処理を行うことで、モータの個体差による誤差を小さくすることが可能となり、高精度な制御 (位置誤差:機械角±0.25°、環境温度:0~60℃) を実現しました。シミュレーションで確認しただけでなく、実機評価でも従来のエンコーダ付きブラシレスDCモータと比べても 3.6倍の高精度な位置決め精度向上を確認しました。現在も更なる精度向上に取り組んでいます。


モータ制御技術の更なる発展と展開

昨今、ロボット分野や車載分野を中心に、モータ単体と駆動/電源回路、モータコントロールユニットを含む制御回路が一体化したモジュール化が進んでいます。日本電産が開発した補正アルゴリズムである線分接続法(CLH)、および線分接続法(CLH)に基いたモータ制御技術により、エンコーダレスでモータコントロールモジュールの低コスト化と高精度化を実現し、アプリケーションの小型化・高精度化のニーズに十分に対応可能となりました。今後、益々コスト競争が激しくなる中国向け産業用ロボットやモビリティーシステムへの応用が期待されます。日本電産は、コスト競争に打ち勝つエンコーダレス位置検出・制御技術を実現するとともに、更なる性能向上を研究・実用化し、ロボットおよびモビリティー市場に革新を起こします。

      ▲線分接続法(CLH)が期待される応用分野

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