1-3-1 DCモータ

直流モータ(direct-current motor)は、英語で DC motor と短縮されるために、DCモータとも呼ばれています。本書でもDCモータの用語を使うことにします。

DCモータの回転力(トルク)は、ステータが発生する磁界の強さと、ロータに流れる電流の積に比例します。ステータで発生する界磁による磁束を界磁束(field flux)と呼びます。

一方、ロータのことを電機子(armature)と呼び、その電流をアマチュア電流と呼ぶことがあります。このアマチュアは、素人(amateur)のことではなく、トルクを発生するための電流を流す装置のことを示します。

DCモータは、永久磁石を用いる永久磁石界磁型と、永久磁石を使わない電磁石界磁型との2種類に大別されます。

モータの分類
                         図1.3モータ分類表

[1]-(1) 永久磁石界磁型DCモータ

永久磁石界磁型 DCモータ(permanent-magnet DC motor)は、永久磁石を用いるモータで、 模型用モータや自動車補機用モータなど世界で一番多く使われているモータです。

永久磁石界磁モータと直流モータ
図1.4永久磁石界磁モータと直流モータ
黒鉛ブラシを連想させるマーク

永久磁石界磁型DCモータは、電機子(ロータ)の形式によって、次の3種類に分類されます。

  • スロット型(slotted type)
  • スロットレス型(slotless type)
  • コアレス型(coreless type)

③のコアレス型は、ムービングコイル型(moving-coil type)ともいいます。

これらの詳細や、永久磁石の種類と特性の関係については、第2章で見ることにします。

[1]-(2) 電磁石界磁型DCモータ

電磁石界磁モータの分解写真
図 1.5電磁石界磁モータの分解写真

電磁石により界磁束を発生させるタイプのモータを図1.5に示します。電磁石界磁型DCモータ (winding-field DC motor)は、主として出力が1馬力(およそ750W)程度の中型からそれ以上の 大型で採用されていました。

この界磁巻線と電機子巻線との結線方式の違いにより、さらに次の3形式に分類されます(図1.6参照)。

[1]-(2)-① 分巻モータ

分巻モータ(shunt motor)は、図1.5に示すような集中巻ステータと整流子ロータで構成され、 界磁(ステータ)巻線と電機子(ロータ)巻線を並列に接続します(図1.6①)。

負荷(モータシャフトに掛かる荷重)が変動しても、回転速度が大きくは変わらない特徴があります。このような特性を、一般的に分巻特性といいます。分巻は「ぶんけん」あるいは「ぶんまき」と読みます。

[1]-(2)-② 直巻モータ

電磁石界磁モータの 3 つのタイプ
図 1.6電磁石界磁モータの 3 つのタイプ

直巻モータ(series motor)では、界磁巻線と電機子巻線を直列に接続します(図 1.6②)。

回転速度が、負荷の変化によって大きく変化するのが特徴です。起動時または低速時では大きなトルクを発生し、負荷が低下すると高速になります。

このような特性を、一般的に直巻特性といいます。この特性を活かして、クレーン、電車およびエレベーターなどの特定用途に供せられていました。

現在では、誘導モータや同期モータをインバータで可変速制御する方法に置き換えられています。読み方は、「ちょっけん」あるいは「ちょくまき」です。

このモータは、整流子型モータ(後述)のところで紹介するように、交流でも回転します。しかし、直流モータとして設計したモータを交流で回転させると、鉄損等の損失が増加するため異常に発熱します。

ところで、界磁巻線と電機子巻線の結線を切り換えることで、分巻モータにも直巻モータにも出来るでしょうか?

結論を言うと、実用的に無理があります。分巻モータでは界磁巻線として細い電線を多数回巻きます(抵抗値大)が、直巻モータの界磁巻線は太い電線を少数回巻く(抵抗値小)からです。

直巻モータの界磁巻線と電機子巻線を分巻結線すると、界磁電流が流れ過ぎて界磁巻線が焼損してしまいます。また、分巻モータの界磁巻線と電機子巻線を直巻結線すると界磁電流(=電機子電流)が流れにくくなるために性能を発揮できません。

[1]-(3)-③ 他励モータ

他励モータ(separate-field motor)は、界磁巻線と電機子巻線を別の電源に接続します(図 1.6③)。

両巻線の電流を個別に制御することによって、広い範囲の速度制御ができます。

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