2022年度特集 - 統合報告書2022

製品

Nidecの技術力

社会変化に適応した製品・サービスの提供

製品の安全性と品質の追求

基本的な考え方

世界No.1の総合モータメーカーである当社はその製品ラインナップの豊富さ、また供給数量の多さから、単なる製品の提供にとどまらず、環境親和性の観点に基づく部品選定や製品の安全性、さらには廃棄やリサイクルに至るまでのあらゆる場面における安全性の全てを保証しなければなりません。当社は安全かつ安心してお使いいただける製品を皆様に提供することで、持続可能な社会インフラづくりに貢献できると考えています。こうした思いの実現には、環境親和性の観点に基づく製品パフォーマンスを高いレベルで維持する必要があり、部品設計時点における材料選定のガイドとなるようなデータベースが不可欠です。2021年度、精密小型モータ事業本部ではそうした材料選定データベースを構築しました。今後はこのデータベースを浸透・活用させるための活動を積極的に進めていきます。
また、車載事業が連結売上高の20%以上を占める一大事業に発展した現在、全ての自動車メーカーの品質ニーズを満たす上で、グローバルに統一した品質管理・品質保証の手法が重要となります。全車載製品を対象とする車載事業横断型の管理体制を強化するために、2025年度までに品質統括組織・体制を確立する方針です。
一方、当社の車載関連製品について、市場プレゼンスの向上に伴い対処すべきリスクも拡大しています。車載製品の安全性確保は人命に関わる最優先事項であり、当社が供給する車載製品の品質上の欠陥により車の安全な走行に重大な影響を及ぼさないよう、新規開発製品を中心に完成品および仕掛品の安全性アセスメントを徹底していきます。

マテリアリティ Phase2 KPI

2021年度の取り組み

精密小型モータ事業本部では部品設計時点から環境親和性と安全性を考慮するための材料選定データベースの構築が完了しました。環境負荷物質半減活動(2021年度比)のロードマップ策定に向けても動き始めており、Eラーニングを用いた教育を事業本部内で実施することで、従業員のESGマテリアリティに対する理解度を深めています。
車載事業本部では当社の車載製品に関する安全性と品質の追求を指標として、製品毎の重大性/影響度に応じた製品安全リスク評価を行う手法を確立するために、グローバル管理方法の具体的な検討を開始しました。例えば、2025年までに品質統括組織・体制を確立させるための第一歩としてグローバル品質管理システムの構築を開始したり、新規開発品および製造工程の製品アセスメントの実施率を100%にするため、製品別不具合の重大性と影響度に応じた評価項目と手法の検討を始めたりしています。

今後に向けて

精密小型モータ事業本部では先述の材料選定データベースを2022年度中に実際に活用することを目標にしています。今後も環境に負荷のかかる物質・材料の切り替えを積極的に進めます。
車載事業本部ではこれまでの製品開発および海外各拠点のデータを用いて情報分析を進め、2022年度中に製品安全リスク評価の指標として選定済みの各KPIのモニタリングと妥当性判断を実施していきます。2023年度以降は、車載製品から当社の他事業の製品にも応用し、品質管理体制を強化するための取り組みを推進していきます。

技術環境・産業構造の変化への対応

基本的な考え方

当社は持続可能な社会の実現に向け、グローバルな社会共通の課題である「地球温暖化による環境問題」「少子高齢化による労働人口の減少」等を重要な社会課題と捉え、製品や事業サービスを通じてそれらを解決するための製品開発と技術研究の促進に取り組んでいます。

マテリアリティ Phase2 KPI

2021年度の取り組み

製品開発や事業サービスを通じたCO2排出削減活動を促進するために、抑制貢献量の実績把握に努め、環境貢献量の定量化に取り組みました。また、サステナビリティを意識した製品開発を推進するために、製品開発ロードマップにおける研究開発領域を再度見直し、環境貢献指針を強化し、意識の醸成と浸透を図りました。

今後に向けて

技術・製品開発においては、環境価値の追求と顧客ニーズの連動を図り、社会と顧客の環境負荷低減に寄与する技術開発に努め、製品の普及展開を目指します。環境価値の追求に際しては、当社グループ内で保持する環境貢献、資源の有効利用に寄与する技術を水平展開し、省エネルギー、省資源、リサイクル(再生材利用)を実現する研究開発を推進します。

会社の持続的成長を支える研究開発

当社グループは、世界No.1の総合モータメーカーとして、幅広い産業分野への貢献を目指し、グローバルに連携する研究開発拠点を設立しています。研究所は、グループの成長を加速させる革新的な製品開発、ものづくりの基盤強化となる生産技術の先進化と高度化、そして社会課題の解決に寄与する技術の創出・発信をミッションとしています。当社は、社会環境の変化に伴い課題解決が優先的に求められている事業分野を有望な成長市場「5つの大波」と捉え、全社一丸となり、技術開発と知財戦略を強化し、製品開発を加速させる取り組みを推進しています。
中央モータ基礎技術研究所では未来社会のニーズを見据え、持続可能な社会を実現させる新しい製品と技術を生みだす研究開発、およびグループの成長を担うモータ応用化分野の研究に注力しており、生産技術研究所ではDXやAIを活用した最先端の生産技術を取り入れながら、生産拠点の統一進化を図り、より高効率なものづくりが出来るよう展開しています。またグローバル生産技術統括本部では、技術革新を伴う生産工法の開発とその実装支援を実施しており、グループ内における迅速かつ機動的な開発を目指した連携体制を敷いています。
特定分野の先行開発を担う研究所としては、2021年には、E-Axleの標準化、次世代機種の開発における競争力強化に向け「プラットフォーム開発センター」を立ち上げました。更に、2022年5月設立の「半導体ソリューションセンター」は、半導体によるモータ事業のインテリジェンス化を見据えています。我々は将来にわたり、製品や技術開発によるソリューション提供を通じ、社会の発展に継続的に寄与できるものと確信しています。
当社は、国内外330社超の事業会社があり、多様な技術の集積があります。今後も各社がこれまでに育んできた知と技術を結集させ、開発の加速とイノベーションの創出を目指します。

知的財産の保護・活用

基本的な考え方

「知的付加価値の創造による事業への貢献」を目指し、知財プロフェッショナル組織および国際競争力のある知財ポートフォリオの確保と強化を通じて、知財価値の向上に努めています。具体的な活動としては、プロダクトライフサイクルの各ステージに合ったポートフォリオ管理および権利活用を行っています。また、他社の知的財産権を尊重し、必要に応じてライセンスや技術供与を受けるなど、当社の知的財産権の相互利用も含めた知的財産の多角的な活用を進めています。社内においては、技術者が積極的に新技術のアイディアやノウハウを創造する「知的ハードワーキング」を奨励するため、それを支援する発明発掘活動や、事業貢献に応じた表彰を行っています。
当社では持続可能な社会の実現に向け、「5つの大波」を中心に、社会共通の課題解決のための製品開発を進めています。これらの製品を保護し、競争優位性を確保するために、知財ポートフォリオを構築するとともに、事業ポートフォリオに合わせた知財ポートフォリオの転換を進めていく考えです。こうした考えのもと、KPIを設定し、知的財産活動の取り組みに注力していきます。

※ 昨今の社会課題を背景に生まれた市場のメガトレンドの内、当社が特に注力する5つの分野のこと。

マテリアリティ Phase2 KPI

2021年度の取り組み

「5つの大波」に関わる製品を中心に、積極的に出願・権利化を進めています。一方、既存ビジネスにおいては、プロダクトライフサイクルのステージに合わせて、ポートフォリオのスリム化を図る等、知財ポートフォリオの転換を進めました。
Nidecグループ全体の製品における「5つの大波」に関連する製品の比率は、2017年の51%から2021年には53%と増加しています(下図参照)。「脱炭素化の波」において、当社の電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」は、2019年に量産を開始し、2022年9月には第2世代の量産を開始しました。さらに現在、第3世代の開発と知財ポートフォリオの拡大を進めており、2021年のE-Axle関連の有効特許件数は2017年比で約5.8倍となっています。また、「省人化の波」のロボット関連製品においても「軽薄短小」を実現する減速機の出願を強化しており、2021年の有効特許件数は、2017年比で約1.2倍となりました。

※ 有効特許件数:権利存続中および出願係属中の特許件数

今後に向けて

今後も「5つの大波」に関わる製品群を中心に出願・権利化を進め、既存ビジネスにおいては、特許価値を評価しながら知財ポートフォリオの転換を進めます。
特にE-Axleに関しては、NEDO※1が公募するグリーンイノベーション基金※2事業に参画し、資源リスクおよびサステナビリティを強く意識した磁石フリーモータの開発に着手しており、引き続き、知財ポートフォリオの強化を図っていきます。

※1 NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

※2 グリーンイノベーション基金:2020年12月25日に経済産業省が関係省庁と策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で、「経済と環境の好循環」を作り出すためにNEDO内に組成された基金

プロダクトライフサイクルに合わせた知財活動
知財ポートフォリオにおける「5つの大波」に関わる製品の割合

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