5軸制御横形マシニングセンタ HM-X6100

HM-X6100による生産性向上

当社は2022年11月に開催された展示会IMTOFにて、5軸制御横形マシニングセンタ「HM-X6100」を出展・発表し、販売を開始した。本機は欧州や米国を中心に多数出荷実績のある「HM-X6000」の後継機種であり、より使いやすく、より高能率にモデルチェンジした機種である。
ここでは、HM-X6100 の仕様・特徴について紹介する。

主な仕様

本機は、従来機である HM-X6000 より各要素の構造を徹底的に見直し、基本性能や生産性を高め、かつ当社独自のAPC機構を搭載することで、ユーザーのより高いニーズに応えることができる機種である(写真1)。主な仕様を表1に示す。

写真1 HM-X6100の本体構造
表1 主な仕様(標準仕様)

特 徴

  • ①ワーク最大積載寸法は φ 800 mm × H700 mm、最大積載質量は650kgまでとなっており、航空機・自動車・エネルギー・金型・一般部品などの幅広い分野に対応している。
  • ②Z軸にはツインボールねじを採用し、直線軸では従来機はオプション対応であった X、Z 軸早送り速度:75 m/min を本機での標準仕様としている。また、旋回軸は A 軸:30 min-1、B 軸 50 min-1 とした。
    このように、当社HMシリーズの特徴である高い送り剛性はそのままに、高速性も兼ね備えることで、サイクルタイムの大幅な短縮を可能としている。さらに、全軸ダブルアンカプリテンション方式とボールねじ中空冷却、ボールねじ熱変補正(当社独自の補正機能)を標準装備しており、熱変位を抑制することで、長時間の連続加工においても高精度加工が可能である。
  • ③高トルクビルトインモータ主軸(写真2)の搭載により、重切削加工が可能である。また、オプションとして超高トルク仕様(8000 min-1)も用意しており、さらにハイパワーな加工にも対応している。
    主軸テーパは,標準仕様 50 番テーパに加え,オプションに 40 番テーパ(主軸回転数は 15000 min-1 または 20000 min-1)も用意している。本機の加工能力例については、表2に示す。

    表2 加工能力例
    写真2 高トルクビルトインモータ主軸部
  • ④主軸端面からパレット中心までの距離(寄り付き)は、主軸周辺形状を見直すことにより、50mmまで接近が可能(図 1)となり、従来機と比べて、より突出しの短い工具を使用した高精度・高能率な加工が可能である。

    図1 主軸とパレットの寄り付き
  • ⑤テーブルにはトラニオンテーブル(写真3)を採用している。A軸が傾斜した状態で停電したときにはパレットを保持し続ける機構を採用しているため、安全性も確保している。また、標準仕様のBRT(ビルトインロータリテーブル)に加え、オプションとして DD(ダイレクトモータドライブ)テーブル仕様も用意しており、ノンバックラッシの高精度な同時5軸加工にも対応している。

    写真3 トラニオンテーブル
  • ⑥ユーザーの治具対応には、パレットスルー方式による治具用油空圧供給に対応しており、従来機では段取り側の油空圧供給しかなかったものを、本機ではテーブル側での油空圧供給が可能となり、段取り側は4系統4 ポート、テーブル側は1系統4ポートまで対応する。
  • ⑦ベッドにはセンタトラフ構造(写真4)にすることで切りくず処理能力を向上させている。主軸には洗浄ノズルがあり、ノーズ上の切りくずを排出することができる。また、従来機ではオプション対応であった天井シャワーを標準装備。さらにX、Y軸シャッタへのクーラントカーテンも装備することで、切りくずを速やかに機外に排出する。
    これにより、従来機に比べて切りくず排出性が大幅に向上している。切りくず処理については、オプションで各種チップコンベヤを用意し、切りくずの種類に応じて対応が可能である。

    写真4 センタトラフ構造
  • ⑧パレット交換については、ダイレクトターン式2APCユニット標準装備することで、ワーク加工中に並行して次のワーク段取りが可能となり、加工終了後には、自動でパレット交換を行なう。
    また、当社独自のAPC機構(当社特許)により、段取り側のパレット上面高さを1180mmに実現(図2)した。従来機と比べて20%以上低くしており、ワーク段取り作業の作業性が大幅に向上している。

    図2 段取り側のパレット上面高さ
  • ⑨ツールマガジンはチェーン式60本マガジンを標準仕様としているが、ユーザーの要求に応じて大容量ツールマガジンにも変更が可能である。
  • ⑩対応する工具は最大径φ300mm(隣接ポットに工具がない場合)で従来機より30mmアップ、最大長さは600 mmで従来機より100mmアップ、最大質量は30kg(ATC 遅旋回設定時)で従来機より5kgアップしており、従来機より対応できる工具の幅が拡がっている。
    また、可変ATC機能を標準装備しており、重量工具や大径工具などを使用するときには、ツール登録時に旋回速度を設定(標準旋回・中旋回・遅旋回)することで、自動的に ATC 旋回速度が可変し、スムーズな工具交換が可能である。
  • ⑪計測機能としては、各種タッチセンサ計測をオプション仕様として用意。ハンドル操作で計測を行なうT0、サイクルスタートするだけでワーク計測 / 補正、工具長計測、工具折損検知を行なうT1を用意している。
    T1については、ワーク計測 / 補正を行なうT1-A、工具長計測と工具折損検知を行なうT1-C、それぞれを組合わせたT1-Bから選択が可能。また、T1-Cについては、レーザ計測式にも対応し、非接触での工具長 / 径と工具折損検知が可能である。
  • ⑫5軸加工支援としては、傾斜面割出し指令やA5-systemなどのオプション機能を用意している。傾斜面割出し指令は、加工物の基準面に対して傾斜した面の座標系を定義し、斜面上の加工プログラムを簡単に効率よく作成することができる機能である。
    A5-systemは、軸線(Axis)状態を解析(Analysis)し、空間(Area)での機械精度(Accuracy)を調整(Adjust)するシステムである。A5-systemでは、操作画面に表示される通りに計測基準球を設置し、サイクルスタートするだけで、タッチセンサを使った旋回中心計測を自動的に行なうことができる。
    5軸機の加工では、旋回軸中心位置の設定が加工精度に大きく影響するが、A5-syatemを使うことにより、簡単な操作で自動的に旋回軸中心位置の設定ができ、5軸割出し加工をより高精度に、同時5軸加工をより高品位に行なうことができる。
  • ⑬自動化支援機能としては、「ソフトCCM」や「ソフトAC」、工具破損時自動再開などをオプションとして用意している。ソフトCCMは、主軸ロード値を監視し、あらかじめ設定された設定値を超えると工具負荷異常と判断して、運転を停止する機能である。
    工具の折損や破損だけではなく、切れ味の低下も監視することができ、工具の加工負荷履歴を保存するため、工具の交換時期も一目でわかる機能となっている。
    ソフトACは、ソフトCCMと同等の機能に加え、主軸ロードメータの値が一定になるよう、自動的に送り速度オーバライドを制御する機能である。これにより、過負荷による工具損傷防止と切削効率の向上、工具寿命延長に役立つ機能となっている。
    工具破損時自動再開は、使用中の工具に異常が発生した際に、機械を停止して加工を中断し、APCによってワーク交換をした後、予備工具を用いて新しいワークの加工を開始・継続する機能である。
    これにより、工具異常による加工不良ワークの発生を最小限に止め、予備の工具を使用して可能な限り加工を続行することができる。このように、各種の自動化支援機能を用意することで、無人化対応にも貢献している。

さらなる生産性向上への対応に向けて

今後は、多連APC(Automatic pallet Changer;自動パレット交換装置)やFMS(Flexible Manufacturing System;1つのラインで複数品種の製造を可能にする柔軟な生産システム)対応、マトリックスマガジン仕様による大容量ツール対応など、自動化・無人化による生産性向上に貢献するとともに、さらなる顧客満足度を高める製品開発に取り組んで行く。

以上が、5軸制御横形マシニングセンタHM- X6100についての紹介である。このように、本機は従来機と比べて、より使いやすく、より高能率になり、自動化や無人化に向けた対応も可能で、ユーザーのさまざまなニーズに柔軟に応えることができる機種となっている。本稿で紹介した当社マシニングセンタが、ユーザーの生産性向上に大いに役立つことができれば幸いである。