2021年度特集 - 統合報告書2021
コーポ―レート・ガバナンス ― 強固なガバナンス体制の構築

社外取締役メッセージ

日本電産は、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、ガバナンス強化に注力しています。今回は、5名の社外取締役に、取締役会の評価や今後の課題、日本電産に期待することなどについて語っていただきました。

広い視野から世界を俯瞰し、注視すべき課題や問題点を取締役会で
議論することを期待

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社外取締役
報酬委員会委員
佐藤 禎一

 各時代の要請を反映しながら、永守会長が長年にわたり培ってきた経営の方針・理念のもと、機敏にガバナンスシステムの改革を推進しているものと評価しています。また、取締役会は重要案件の情報共有の場として有意義な機会となっていますが、今後は執行役員との機能的な連携強化が必要と考えます。
 新たに発表した新中期戦略目標「Vision2025」については、自社の現状を踏まえた適切な目標が設定されていますが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって社会が一変したように、今後も様々な事業環境の変化が予想されます。そのため、社会の急激な状況の変化に対し、常に見直しを行う体制が必要と考えます。VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)時代にあって、環境問題や少子高齢化の進展に伴う労働人口の減少等といった多くの課題が顕在化する中、今後も継続して収益を拡大し成長するために広い視野から世界を俯瞰し、注視すべき課題や問題点を取締役会で議論することを期待しています。私も、世界的な視野をもって他業種での取り組みを含めた情報収集を行い、目標の進捗状況を観察するとともに、必要な提言を行っていく方針です。
 日本電産が製造する高性能なモータは、サステナブルな社会の形成に貢献するものです。これら製品の一層の改善努力そのものがこれからのサステナブルな社会の形成に寄与するものですが、製品の川上から川下まで幅広い視野から検討されていることを評価しています。一方で、ダイバーシティの観点から課題を申し上げると、現段階では十分な配慮がなされているものの、さらに世界的な視野での工夫・改善が望まれます。
 日本電産は、企業の使命として「世界一高性能なモータで地球に貢献する」を掲げています。現在の体制を強化し、Vision2025に掲げる取り組みを着実に実行することが使命の達成に直結しているものと考えますので、緩みのない前進を期待しています。

ESG等への取り組みにおいても先進的な活動を期待

社外取締役 報酬委員会委員 清水 治の写真
社外取締役
報酬委員会委員
清水 治

 日本電産は、監査等委員会設置会社への移行や報酬委員会の設置など、ガバナンス体制の強化が図られ、持続的な企業価値の増大、ステークホルダーや社会的価値への配意の観点から、適切なガバナンス体制になっていると考えます。また、取締役会における討議も、グループを巡る重要な投資事案や財務事案に即して、様々なリスクの見通しと対応策に重点を置いたものとなっています。今後も、討議の重点テーマとして、世界各地に展開する多数の拠点、多様な事業分野やグループ企業を俯瞰しつつ、生産・営業・財務・研究開発等の各分野で課題やリスクを常に洗い出し吟味していくことが肝要です。さらに、生産・営業・研究開発という縦割り組織に対し、横串の管理機能が有効であるかについてモニタリングを徹底していくことや、中長期の戦略を四半期ごとに吟味していくことも重要と考えます。
 2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大という、これまでに経験したことのない大きな危機に直面しました。そうした状況下において、日本電産は人命尊重を基本としつつ、世界No.1の総合モーターメーカーとして、経済活動の基盤となるモータ供給の確保を目指して取り組んだことは、適切な対応であったと考えます。
 来る2025年度は、2030年度連結売上高10兆円達成に向けた重要な道程です。また、今後日本電産グループが成長する上で大きなカギとなる、電気自動車の普及といった気候変動対応がより迅速に求められる節目の年となります。このような点を踏まえて策定された新中期戦略目標「Vision2025」は、日本電産グループとしての達成目標を明確化した中期の戦略として高く評価しています。同時に、その達成に向けてグループ一体となった取り組みが強く求められていると考えます。サステナビリティ経営については、気候変動対策や関連情報開示の充実、従業員の処遇改善や女性登用等の人的資本強化策、サプライチェーンマネジメント等の課題について、熱心に討議しています。日本電産がグローバル企業として、サステナビリティ、ダイバーシティの観点を重視し、ESG等への取り組みにおいても先進的な企業となれるよう今後の活動に期待しています。私は、 Vision2025の目標達成に向けて、経営状況やリスク関連情勢を察知・把握するとともに、社会経済の趨勢・変動を予測しながら、取締役会で問題提起・吟味していくことで、貢献していく方針です。

Vision2025において、成長戦略の実行と資本効率の最適化とともに、ESG活動本格化を明言したことを評価

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社外取締役
監査等委員
中根 猛

 日本電産では、この2年ほどの間に監査等委員会設置会社への移行に加え、任意の報酬委員会の設置による取締役の報酬決定の透明性向上、連結子会社も含めた内部統制強化等、ガバナンス強化が着実に進展しています。こうしたガバナンス強化に伴い、取締役会の機能は会社の経営方針等戦略的な事項の決定と、経営者の業務執行の監督に集中するいわゆるモニタリングモデルに向かっていますが、これは会社の持続的成長と中長期的企業価値の向上を促すものと考えます。今後はこうした流れを定着させるとともに、社外取締役による報酬委員会議長就任等、一層のガバナンス強化につながる措置について検討する必要があると考えます。
 日本電産は、新たに中期戦略目標「Vision2025」を発表しましたが、成長戦略の飽くなき実行と資本効率最適化の追求とともに、ESGへの取り組みを本格化し、地球の環境保全等への貢献を高めグローバル企業としての社会的責任を果たすことを明言しています。日頃からESG経営の重要性について頻繁に議論されており、新たな経営戦略としてESGに関する取り組み・目標が盛り込まれたことについて、私は高く評価しています。日本電産の提供する高性能なモータは、電気自動車の拡大に伴い、一層大きな役割を担うことが期待されます。日本電産が持続的成長を続けることで、製品が世界中に広まり、CO2排出量の削減、ひいては地球温暖化防止や地球の環境保全に大いに役立つものと確信しています。加えて、多様な人材を活かすため、その能力が最大限発揮できる機会を提供することが、イノベーションを生み出し価値創造につながるものとして、職場環境整備等の議論が活発に行われています。今後は、一歩踏み込み幹部役職への女性の積極的な登用や外国人取締役の起用についても検討することが重要になると考えます。私は、海外での投資やM&Aに関する当該国の政治・経済情勢を含めた投資環境、さらにはESGや人権デューデリジェンス等の国際的な動向等についての意見表明を通じて、Vision2025の目標達成に向けて取締役会の適切な決定に貢献したいと思います。

常識的なビジョンの一歩先を見据え、グローバル市場でのプレゼンス維持・向上、そして在りたい企業像の実現に期待

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社外取締役
監査等委員
山田 文

 ガバナンスの中核的な価値である、株主との関係や株主の権利行使の保障については高く評価しています。一方、地域社会や従業員等、株主以外のステークホルダーとのさらなる関係強化が必要であると考えます。一例をあげると、従業員の労働環境は様々な点で改善されてきているものの、性別や国籍等の多様性を促進することが、柔軟かつ強靱な発想で世界水準を維持していける人材を世界から呼び込む点で重要となります。また、取締役・執行役員の選任・指名について、重視すべき観点等をより開かれた形で検討するプロセスが必要です。指名委員会等の機関が最適かどうかは慎重に検討する必要があると思いますが、外部からの視点も取り入れながら、経営の人的側面を強化することで、持続的な成長につながるものと認識しています。
 一方、これだけの規模の企業体でありながら、不適切な会計等の不祥事予防については、大変コントロールされていると評価しています。今後のさらなる体制強化のために、海外グループ会社を含めた複数のネットワークでのコントロールや、近年高度化が求められている内部通報制度等にも対応していく必要があると考えます。
 日本電産の真骨頂、それはグローバル製造業として成長し収益を拡大するとともに、「世界一高性能なモータで地球に貢献する」という使命を同時に推進していることです。日本電産グループの技術力を活かして生み出される製品は環境保全に貢献します。今後は、日本電産の製品が環境保全にどれだけ貢献することができるか、積極的にアピールしていくことを望みます。
 現在、会社経営や労働環境、製品の安全・品質基準等、国内の常識を超えてグローバル化が一層進んでいます。日本電産は、すでに一歩進んだ企業であると考えますが、これに甘んじることなく、常識的なビジョンの一歩先を見据えた企業を目指しています。今後も、ステークホルダーの皆様とも建設的なコミュニケーションを積極的に取りながら、グローバル市場でのプレゼンスを維持・向上させ、在りたい企業像を実現させることを期待しています。

ポートフォリオ転換という重要な局面を迎える中、自社の成長と
サステナビリティに関する活動をサポート

社外取締役 監査等委員 報酬委員会委員 酒井 貴子の写真
社外取締役
監査等委員
報酬委員会委員
酒井 貴子

 日本電産は、2020年に監査等委員会設置会社へと移行、 2021年には報酬委員会を設置するなど、ガバナンスは着実に強化されています。また、サステナビリティを経営の重要な事項と認識し、取締役会においてESGにおける重点項目について議論を進めています。特に、環境面では自社の成長段階に応じた対応・対策が練られており、将来像がしっかりと描けていると評価しています。社会面においても、女性幹部・執行役員の育成や、海外グループ会社の外国人幹部が参加する経営会議開催等、世界中に拠点を持つ企業としてダイバーシティ経営が本格化しつつありますので、今後もこうした活動に期待しています。
 さらに、私が評価するポイントとして、社内取締役は社外取締役からの意見に真摯に耳を傾け、質問にも納得いくまで説明いただいていることにあります。質問の都度、社内外の経済状況や関連事項についての豊富な情報量に基づく的確な回答を社内取締役から得ることができ、ガバナンスに対する意識の高さがうかがえます。私は、2020年に社外取締役に就任しましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により会社としても大きな影響を受ける中、私からの質問に迅速に答えていただくとともに、情報提供も円滑かつ十分に進めていただくなど、スピード感をもって対応いただいています。こうした対応は、決して即席ではなく、従来根付いた企業姿勢であることを実感でき、危機管理体制としても有効性を発揮しているものと感じています。
 日本電産は、世界的な潮流を見据え、ポートフォリオ転換という重要な局面を迎えています。こうした中、現在堅実な会社運営がなされる一方で、2030年度連結売上高10兆円の目標に向かって、売上拡大につながる積極的かつ熱心な研究開発が数多くなされています。このような自社の成長に向けた取り組み、そして先に述べたサステナビリティに関する活動等、グループ一丸となり挑戦を続けています。私は、これまでのキャリアを活かし、今後も社外取締役の役割をしっかり果たすことでサポートしていきたいと考えます。

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