2023年度特集 - 統合報告書2023

技術戦略

E-Axle のラインナップ拡充、および量産体制を早期に構築 常務執行役員 副最高技術責任者 半導体ソリューションセンター所長 兼 ソリューション企画・戦略部長 大村 隆司

半導体ソリューションにおける協業

 2023年6月5日に当社とルネサスエレクトロニクス株式会社は「EV向け次世代E-Axleの半導体ソリューションの協業」について公表しました。翌日には両社合同の記者会見も実施しました。

 電気自動車(EV)については、電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」と呼ばれる、モータ・インバータ・ギヤを一体化した3-in-1ユニットの使用が増加しており、当社も2019年より3-in-1タイプのE-Axleを出荷しています。最新のトレンドとして、小型軽量化や低コスト化への需要の高まりから、DC-DCコンバータ・オンボードチャージャ(OBC)・電力分配ユニット(PDU)などのパワーエレクトロニクス制御を統合する動き(X-in-1化)が加速しており、特に中国においてこうした傾向が顕著となってきています。当社も2024年以降市場投入予定の第3世代E-Axleにおいては、X-in-1化対応を予定していますが、X-in-1化は「全体最適による高効率化」「軽量化や体積削減」「高電圧用ケーブルや冷却ケーブルの削減」「半導体の個数や電子制御ユニット(ECU)間のハーネス削減」等のメリットが期待できる一方で、「統合化によるセーフティ・インテグリティへの懸念」「メンテナンス性の低下」「冷却システムの複雑化」「部品へのより高い信頼性の要求」などの課題を残しています。
 こうした課題解決に向けて、ルネサスエレクトロニクス株式会社と協業し、業界最高水準の高性能・高効率、小型軽量・低コストを同時に実現するX-in-1システム向けに、高品質・高機能なPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施することとしました。第一弾として、2023年末までにモータ・インバータ・ギヤに加え、DC-DCコンバータ・オンボードチャージャ(OBC)・電力分配ユニット(PDU)を搭載した6-in-1のPoCを開発する計画です。この段階でパワーデバイスにはSiC(炭化ケイ素)を搭載する予定です。さらに2024年には第二弾として、バッテリーマネジメントシステム(BMS)他も統合してさらに集積度を高めたX-in-1のPoCを開発する予定です。第二弾の段階ではパワーデバイスは高周波動作が得意なGaN(窒化ガリウム)に置き換え、更なる小型化と抵コスト化を図る予定です。
 当社はルネサスエレクトロニクス株式会社を車載EV半導体ソリューション戦略パートナーとして選定し、同社のRFQ(Request for Quote)を通じてどのようなスペックの半導体が次世代E-Axleに必要かを定義し、開発を進めていきます。本協業で開発したPoCをベースとして早期に製品化を実施し、E-Axleのラインナップ拡充に加え、量産体制を早期に構築することを目指します。

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