2023年度特集 - 統合報告書2023
環境 ― 脱炭素社会の実現 ―

製品を通じた脱炭素化への貢献、事業活動で排出するCO₂の削減、廃棄物・有害廃棄物の管理、水リスクへの対応

製品を通じた脱炭素化への貢献

基本的な考え方

 気候変動問題の深刻化を背景として脱炭素化へ向けた世界的な潮流が加速する中、当社はグローバルに事業を展開する企業として脱炭素化に資する製品の開発・供給に注力していきます。具体的には、世界中で排出されるCO₂量の10%以上を占めると言われる自動車に関連する製品に着目しており、当社製品が従来使用製品と置き換わることにより削減可能なCO₂排出量を算定し、その推移を管理しています。
 当社製品を通じた脱炭素化への貢献については、投資家をはじめとしたステークホルダーから一定の評価をいただいているものの、製品普及による脱炭素社会への貢献度合いの可視化や適切な情報発信の不足が課題であると認識しています。電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」や電動パワーステアリング用モータ導入によるCO₂排出削減のみならず、小型電気自動車や電動二輪車用モータなど、より多くの製品で脱炭素化への貢献度を可視化することを目標として各種施策に取り組んでいきます。

マテリアリティ

具体的な製品例➊
電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」の提供

 「E-Axle」は電気自動車(EV)の心臓部となるトラクションモータシステムです。モータの他インバータや減速機を一体化したもので、車体に搭載してドライブシャフトと接続すれば回転トルクを発生させて、この製品だけで車を走らせることができます。EV開発は非常に厳しい競争環境下にあり、車両メーカーにとって開発スピードは生命線となっています。インバータや減速機がすでに組み込まれた一体製品となっているE-Axleを採用することで、スピード面でも車両メーカーの開発を支援することができます。

具体的な製品例➋
高効率・省エネモータの提供

 自動車のCO₂排出量削減の鍵は、エンジンの負荷を抑え、燃費を改善することにあります。世界の多くの自動車メーカーは、こうした視点からEPS(電動パワーステアリング)の採用を推進。NIDECグループは油圧式のものと比較して約5%の燃費向上が見込める電動パワーステアリング用モータを供給しています。
 また、アイドリングストップ機能を実現する電動オイルポンプ用モータなど、CO₂や大気汚染物質の排出低減につながる製品群を供給しています。

その他製品の取り組みは、以下をご覧ください。
https://www.nidec.com/jp/sustainability/environment/ecofriendly/

2022年度の取り組み

 当社の電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」の販売台数は累計70万台以上(2023年4月時点)にのぼりました。2022年度の大きな取り組みとして、2019年より生産していたE-Axleの第2世代となる機種の量産を2022年9月に開始しました。従来モデルと比較し、①磁気回路およびインバータの小型化による重量19%減(トルク・出力密度を20%向上)、②新たな冷却技術の採用による重希土類使用量の大幅な削減、③静音性の向上を実現しています。より小さく高性能で環境負荷の少ない製品を供給することで自動車の電動化、ひいてはCO₂排出量の削減に貢献しています。
 なお、E-Axleへの置き換え(ガソリン車からEVへの切り替わり)により、2022年単年度で253千tのCO₂排出削減を達成しています。

※ 2022年度に販売したE-Axle台数を基に算出。

今後に向けて

 E-Axleの第2世代モデルに次ぐ第3世代モデルを2024年に販売開始すべく、開発を進めています。更なる小型化・高性能化はもちろんのこと、従来はモータ・インバータ・減速機の「3-in-1」であったE-Axleに主要部品を追加した「X-in-1」のE-Axleを開発しています。そうした、より環境負荷の少ない次世代モデルへの置き換えと販売の拡大により、加速する脱炭素化への動きに貢献していきます。

事業活動で排出するCO₂の削減

基本的な考え方

 当社は「製品を通じた脱炭素化への貢献」と同時に、事業活動におけるCO₂排出量削減にも注力しています。NIDECグループは今後もM&Aを含む事業規模の拡大によりエネルギー使用量が増え続けることが想定されるため、使用するエネルギーの総量が増加してもCO₂排出量を削減する仕組みの構築が不可欠であると認識しています。こうした中、再生可能エネルギー(再エネ)への大幅なシフトを当面の目標としています。

マテリアリティ

2022年度の取り組み

 簡易省エネ診断を初動として、空調システムの効率改善から進めています。ニデックモータ(大連)有限公司ではプレス工場の天井の高さを活用した大型ファンを設置し、夏場の消費電力を削減しました。

消費電力

 次に、再エネ導入においては各事業所単位での取り組みに注力してきました。これらの取り組みの結果、2022年度の再エネ導入比率は8.2%となりました。またTCFDについては、車載事業を気候変動による実質的影響が最も発現しやすい事業と定義し、気候変動インパクトに関するシナリオ分析を実施しました。

再エネ電力導入を進めているニデックプレシジョン(タイランド)株式会社

今後に向けて

 引き続き自社事業のエネルギー効率向上と再エネ導入を両輪とした取り組みを進めていきます。まず、省エネ診断ツールの活用や優秀事例の共有を行うことで、各事業所の設備および機器のエネルギー効率を改善します。次に、各事業所単位での再エネ導入と地域単位での包括的な再エネ調達を組み合わせることで、総連結全体の再エネ導入比率を高めていきます。TCFDについては、車載事業で特定した気候変動リスク・機会の定量分析を進めるとともに、他事業部門でのシナリオ分析実施を進めていきます。

廃棄物・有害廃棄物の管理

基本的な考え方

 近年、廃棄物増加が世界的な社会問題となる中、当社は原材料の有効活用を実現するための事業プロセスの構築に注力しています。製造工程において極力無駄を無くすことはもちろん、容器や梱包材の使用を最小限にする取り組みも行っています。その他、廃棄物の分別徹底による再資源化の推進にも継続的に取り組んでいます。
 また、NIDECグループは各事業所において化学物質の使用・保管等を十分な注意をもって行い、漏出を防止するとともに、生産工程の改善・革新の一環として化学物質の使用・排出量をできるかぎり削減しています。さらに、製品に含有される有害化学物質に対する国際的な規制にも、情報システムや分析技術を活用して包括的に対応しています。

マテリアリティ

2022年度の取り組み

 2022年度の廃棄物・有価物等発生量は135,580トンとなりました。これを2025年度までに売上高原単位で3%低減させる手段の1つとして、製品の主要調達資材を基本とした資源別分類での把握を開始しました。この手法においては、調達データと比較し、材料歩留まりの概算が可能となります。
 また、化学物質の管理においては日本の法令に基づくPRTR制度のもと、同制度が指定する化学物質のうちNIDECグループ国内事業所において使用しているものの排出・移動量を把握し、情報開示しています。

※ Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度

今後に向けて

 廃棄物の発生量を削減する取り組みとして、製品面では開発設計の見直しによる省資源化を推進していきます。また、生産工程においては材料歩留まりの向上が重要であり、資源別の廃棄物の発生分析やロスの見える化を進め、課題の解決に取り組んでいきます。

水リスクへの対応

基本的な考え方

 水は人々の生活や産業にとって欠くことのできない最も貴重な資源であり、海水や氷山・氷河を除くと地球上で実際に利用可能な水資源は全体の1%程度しかないと言われています。当社は、水資源の枯渇は工場の操業短縮や停止等、事業継続への影響が大きいと認識しており、水資源の保全に向けた節水やリユース・リサイクルの取り組みを実施しています。また事業活動を継続していくための取水・排水リスクの把握や、周辺地域および水源地域への影響の把握といった水リスク管理に取り組んでいます。

マテリアリティ

2022年度の取り組み

 水に起因する事業活動への影響を把握・軽減していくため、製造事業場が位置するグローバル全地域において水リスクの大きさを評価しました。評価においては、水量不足などの物理的なリスクだけでなく水に関する規制や地域の評判リスクなどを評価できる世界資源研究所(WRI)のAqueductと、世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filterを活用しました。

今後に向けて

 水リスクが高い可能性のある地域の製造事業場から、現地天候、水に関する外部概況や行政等の現地情報の収集を行います。これらの現地情報と水使用量などの事業場情報を詳細に照らし合わせ、事業活動への影響を具体的に分析していきます。水リスクアセスメントのプロセスを着実に進めるとともに、リスク軽減策を検討していきます。

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