2016年度特集 - 日本電産 中期戦略目標 Vision 2020

2. 未来はもう始まっている

1979年、日本電産が世界に先駆けて実用化したハードディスクドライブ(HDD)用ブラシレスDCモータは、 その後のコンピュータの小型化を実現してきました。
そして今、日本電産グループの製品領域は精密小型から超大型までのあらゆるモータ、 モータ周辺製品・応用製品にまで拡大しています。
一つの小さなモータがコンピュータの未来を変えたように 当社グループの製品やサービスが、暮らしや社会を飛躍的に変える――
その未来がもう始まっています。

三位一体が生み出す新しい未来のカタチ

科学・技術・技能を一体化し、モノづくりの技術革新を実現する
当社はHDD用モータをはじめ、数々の「世界初」「世界最小」となる製品を世に送り出してきました。それらの製品はすべて、モノづくりの現場に流れる社員の情熱と、そこから生まれたアイデアの結晶です。市場が求める製品を迅速に開発できる体制、そして正確で信頼性の高い製品をより安く大量に生産できる体制を当社の強みとしてきました。
そして今、IoTやクルマの自動運転、サービスロボットの登場といった技術革新が急速に進む中で、モータにも従来にはないような画期的な機能・性能が求められています。そこで2012年に、アジア3地域(日本・シンガポール・台湾)に拠点を置き、世界トップを目指す、モーター基礎技術研究所を創設しました。ここでは「インテリジェントモータ」のように、今までなかったモノを生み出す研究をしています。
またモノづくりにおいては、革新的な生産技術の確立を目指し、2015年に生産技術研究所を創設しました。ここでは、人間に頼らずロボットが自ら考え運営する「スマートファクトリー」の実現に向けた研究等をしています。
今後の日本電産は、科学的な基礎研究をもとに新技術を生み出すモーター基礎技術研究所。高い技術力で市場ニーズにマッチした製品を迅速に開発する開発部門。そして熟練職人の技能までも機械化する新しいモノづくりを追求する生産技術研究所。この三者を核にして、社是にある「科学・技術・技能の一体化」を体現し、日本電産のモノづくりの革新を実現していきます。

日本電産グループの革新技術が、IoT時代を拓く

ソーラーパネルを使った灌漑用ポンプシステムでインドの農地拡大に貢献
インドでは、電力消費増による電力不足が深刻化する一方、電気の通じていない地域も依然多いといった問題を抱えています。それらの地域では電動ポンプが使用できないため、農地の開拓や有効利用が進んでいません。エンジンポンプは、軽油の安定的確保が困難であるうえ、CO₂を多く排出するという課題が残ります。この問題解決について、2014年にインド・モディ首相から直々に当社会長の永守へ要請があり、当社の駆動技術や蓄電技術を生かした灌漑用高効率ソーラーポンプシステムを開発しました。現在は実証実験段階ですが、早期の普及に取り組み、インドの農地拡大に貢献していきます。また、このシステムをIoT化することにより、ポンプ稼働の最適化や故障予知を実現するとともに、温度・湿度センサ等からデータを収集し、外部の気象データ等と組み合わせることで、インド農業の生産性向上に貢献していきます。


   
▲ソーラーパネル                   ▲ポンプシステム


スマートAGV(無人搬送車)による効率の良い搬送システムの構築
日本電産シンポのAGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)は、世界をリードする高度な技術によるブラシレスDCモータと高精度減速機を備え、従来のAGVに比べ小型で静粛性があり、ガイドレス(走行のガイドとして機能する磁気テープを床に貼り付ける必要がない)という特徴を持っています。その優れた性能から、工場や倉庫などで活躍し、様々な企業の物流システムにも採用されています。また、AGVにIoT機能を付加した「スマートAGV」の開発を進めています。スマートAGVはガイドレスで走行できるだけでなく、隊列走行が可能な追尾機能や人間の動きを補助するアシスト機能を備えています。また、各部の振動やノイズのデータを集めることで故障予知ができます。位置・走行データを収集・分析することで効率的な運行計画の立案も可能になります。


▲スマートAGV(S-CART)


触覚デバイスが、モノと人と目的地をつなぐ
様々なモノが人とつながるIoT時代には、人間と機械とのコミュニケーションを媒介する新しいインターフェースが重要な役割を果たします。日本電産グループでは、機器を操作する時に様々な感覚をフィードバックする触覚デバイスを開発し、パソコン、スマートウォッチ、スマートフォンやゲーム機などに採用されています。これらの触覚デバイスは、タッチパネルに指で入力を行う時に、その指に触覚を使ったフィードバックを返すことで、視覚に頼らないデジタル機器との双方向のコミュニケーションを可能にしています。また触覚デバイスは、人間の錯覚を利用して「あたかも手を引かれるような感覚」を生み出すこともできます。そして、その手を引かれるような感覚をナビゲーションに利用することで、目的地への移動を支援することもできます。こうした触覚によるインターフェースは、視覚に障がいのある人たちをサポートする機器としても大きな可能性を持っています。



VRの可能性を拓く日本電産のFDBモータ※1
ゲームなどの新製品が次々と誕生し、普及期に入ったVR。市販の機器の中でもっとも高度なVR体験ができるといわれるHTC社(本社・台湾)のVRシステムに、当社のFDBモータが搭載されています。このVRシステムでは、ユーザーの実際の位置や動きを検出しVR空間内に連動させるためにLIDAR※2が使われています。そのLIDARには低速回転でも回転ムラが少ないモータが不可欠であることから、実績のある当社のFDBモータが採用されました。また、このLIDAR技術を用いたビジネスは、VRゲームなどの市場から、エアコンなどの家電や、自動運転車、ロボット、ドローン市場へと、今後無限大に広がります。日本電産グループは、LIDAR技術を更に進化させ、新たな市場を開拓していきます。


※1 FDB(Fluid Dynamic Bearing:流体動圧軸受)モータ:
      軸受に流体(オイル)を使用したモータ。低騒音・低振動性、高耐衝撃性、低消費電力、長寿命という特性がある。
※2 LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging):レーザーによる画像検出と距離測定。

 

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