2-1-4 鉄心溝のあるDCモータ

次は鉄心のあるモータについて考えてみましょう。

普段私たちが目にするDCモータのロータは、溝を設けた薄い鉄板(ケイ素鋼鈑)が積層され、この鉄心溝(スロット)にコイルが挿入されています。

ロータがどんな角度からでも回転できる最小溝数は3で、これは模型用モータでなじみ深い構造です。

溝数が少ないと、回転位置により発生トルクに差がでます。溝とコイルの数が多くなるほど、トルクのムラ(変動)が減り回転が滑らかになります。このため高級モータでは溝数を増やし、多くのコイルを配置します。

溝数の多いモータでは、図2.15 のように、コイルをたすき状に巻きます。

この巻き方を重ね巻といいます。また、隣り合った溝間にコイルを巻く巻き方は集中巻といい、ステッピングモータやブラシレスDCモータで採用されます。

鉄心溝のあるロータとコイル
                         図2.15鉄心溝のあるロータとコイル

ロータコイルを展開すると、図2.16(b)のように整流子を付け根のようにして、花びらのように結線されています。図からわかるように、端子からの電流はコイル群を2つに分かれて流れます。DCモータではこのような構造により、巻線の一部がロータの回転に伴って、順に切り替えられる構造になっています。

重ね巻きしたコイルの展開
                         図2.16重ね巻きしたコイルの展開
スキューを施したロータ
                 図2.17スキューを施したロータ

また、コイルの切り替えは、磁石の中間位置、磁力の働いていない部分(中性帯)で行い、逆起電力が発生しないようにします。このような構造を採用すると、コイル電流が切り替わる時(転流時)のブラシの損耗を減らすことができます。

トルクムラを減らすもう一つの方法は、溝を回転方向に斜めにすることです。

これをスキュー(skew)または斜溝と言います。スキューを施したロータを、図2.17 に示します。

<一口コラム> コイル(coil)と巻線(winding)

モータでは、ポールに電線を巻いたものを「コイル」と呼び、各コイルを相互に結線した状態を「巻線」と呼ぶのが一般的です。本書でも慣用に従い両者を使い分けています。

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