2022年度特集 - 統合報告書2022

日本電産の競争優位

Business Strategy
他社とは一線を画す経営戦略

Q. 創業から現在まで、現在から未来に向けて
日本電産の成長を支える経営戦略の根幹は何か

A1. シェアNo.1への拘り

当社経営戦略の最大の特徴として、「シェアNo.1戦略」があります。同戦略は①市場への一番参入②競合に先駆けた技術開発③コスト競争力の徹底追求の3要素から構成されます。具体的には、製品の需要発生前に先行投資を実施し、需要発生時に市場内シェアを一気に獲得。その後もコストダウンで先行して競合を寄せ付けず競争優位を獲得する戦略です。同様の手法で当社はHDD用モータを筆頭に数々の世界No.1シェア製品を保有するに至っています。現在、多くの産業で上位企業による寡占度が高まっていることを考えると、「シェアNo.1戦略」は極めて合理的なアプローチと言えます。

A2. スピード経営

スピードこそ最大の武器であり、決断も行動も最大限迅速に行うことが当社経営戦略の大きな特徴です。創業期における事業拡大のきっかけとなった米国スリーエム社からのカセット複写機向けモータ受注は、「モータサイズを3割小さくせよ」との信じ難い要求をその場で承諾したからこそ獲得できたと言っても過言ではありません。通常、リードタイムが3~4年にわたる車載事業でも同様のスピード感を持って取り組んでおり、2017年に広州汽車グループから受注した電気自動車用駆動モータシステム「E-Axle」のケースでは、工場も設備も人員もない状態からわずか1年ほどで量産を開始し、スピード経営を実践しています。

A3. リスクテイキング

「リスクを取るべき時に取る」ことも当社の経営戦略の根幹です。市場拡大を予期できても、リスクテイキングを躊躇して参入が遅くなれば競合の後塵を拝し、市場拡大の果実を得ることができなくなります。HDD用モータのビジネスにおいては、市場が本格拡大する前に大胆な大型先行投資を実施し、競合に先んじて生産設備を確保したことが圧倒的競争優位の獲得につながりました。車載事業に関しても当社は躊躇なく先行投資を実施し、2025年以降、需要の急拡大が予想される電気自動車向け駆動システムの生産体制構築を進めています。

経営戦略を支える潤沢な経営資源 1. 業界シェアNo.1製品群(財務基盤)2. グローバルで11万人超の従業員(人的基盤)3. グローバルで200以上の生産拠点(生産基盤)4. M&Aでの経験、知見(成長基盤)

Nidec’s DNA
逆境を機会とし成長に挑む企業文化

Q. ピンチをチャンスとし、
今後も成長に向けて挑み続ける企業文化の特長とは

A1. 根幹となる企業文化の存在

当社には創業以来掲げている「三大精神」があります。
①「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」
明日やろう、そのうちやろうではなく、できることには直ちに取り掛かる、そしてできるまでやる。
②「情熱・熱意・執念」
ほとばしる情熱、沸き立つ熱意、困難に立ち向かう執念。この3つは全ての礎となる根本精神。
③「知的ハードワーキング」
「知」と「時間」を掛け合わせて働くことで「並みの働き」では達成できないアウトプットを出す。
1973年7月23日の創業以来止まることのない成長を支えてきたのは、日々の行動の礎となる「三大精神」があり、困難に直面した際に立ち返るべき企業文化が存在したからに他なりません。

A2. 企業文化は末端まで浸透

当社における企業文化は決して経営陣だけのものではありません。2009年に開始されたWPR®活動では、現場で働く社員から数千にわたる費用削減、効率化に関わるアイディアが寄せられ、プロジェクト進行の大きな原動力となりました。企業文化が組織の末端まで浸透し、「現場力」が蓄積されていることが当社の成長を支えています。

※ダブル・プロフィット・レシオ=費用削減および効率化により、売上が半分になっても黒字を確保、売上が元の水準に回復した際には以前の利益率から倍とすることを目指すプロジェクト。

A3. 逆境を機会と捉える企業文化

「困難は必ず解決策を連れてくる」。ピンチをチャンスと捉えることで当社は成長を続けてきました。2011年に発生したタイの洪水でHDD用モータの主力工場が水没した際には、現地従業員の不断の努力によりいち早く工場の完全再稼働に漕ぎつけ、高い市場シェアの確保につなげることができました。2019年に当社グループ入りした日本電産モビリティ(旧オムロンオートモーティブエレクトロニクス)も、逆境を機会と捉え成長しています。同社は2020年度第1四半期に顧客工場操業停止の影響で売上が半分となった際に、あらゆる観点で経営合理化を実施しました。その結果、同四半期でも営業利益は損益分岐点近辺を維持し、以後の売上回復期には営業利益率が急上昇しています。

企業文化の根底にある「No.1への渇望、成長志向」 「一番以外はビリ」「脱皮しない蛇は死ぬ」、に代表されるNo.1に拘る成長志向は日本電産創業以来のDNAとなっています。<br>多くの産業において上位企業しか生き残ることができておらず、既存事業への依存によって企業の成長が阻害される事例も生じており、No.1に拘る成長志向は経営戦略としても極めて合理的であると言えます。

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