未来への取り組み

トラクションモータシステム「E-Axle」
(EV駆動モータシステム)

NIDECグループの技術を結集して「EVの心臓部」を製品化
- 小型軽量、部品統合化、スピード開発で世界の自動車のEV化を強力に牽引
- 車両デザインの自由度、運動性能、動力性能、電費性能、静粛性の全てに貢献

電気自動車(EV)やハイブリッド車の普及に伴い、トラクションモータへのニーズが高まっています。トラクションモータはエンジンの代わりとなる自動車の心臓部。運動性能を左右するトルク特性や航続距離を伸ばすための効率性、更には静粛性、小型軽量化、そして信頼性やメンテナンスのしやすさなど、求められる性能は多く、品質への要望も急速に高まっています。

車両を動かすためには、モータのほかにインバータや減速機が必要となります。NIDECではこの3つが一体となったEV用トラクションモータシステム「E-Axle」を開発し、2019年4月から量産を開始しました。

E-Axleはモータ、インバータ、減速機が一体となっているため、車体に載せて製品に電力を供給すれば、タイヤにつながるドライブシャフトの回転トルクを発生させて車を走らせるところまで、一製品で自己完結できます。EV開発は大変厳しい競争環境下にあり、開発にはスピードが求められますが、車両メーカーは「E-Axle」を採用することで、非常に短期間でEVを開発することができます。

ユニークな油冷方式を採用して圧倒的な小型軽量化を実現

出力150kWタイプで3900N・m、重量87kgと小型軽量で、パワー密度で他社製品を大きく上回ります。この小型軽量化実現の背景には、NIDECがIT分野で培ってきた関連の超小型・超薄型化技術など世界最小クラスのモータを数々生み出してきた開発ノウハウを有していたことがあります。
加えて、E-Axleでは新しい冷却方法を採用しました。トラクションモータには水冷式もありますが、ウォータージャケットなどがスペースを取るため、大きく重くなりがちです。そこで「E-Axle」ではモータの冷やしたいところに直接冷却油をかけることができる油冷構造を採用しています。また、モータの上部からオイルクーラーで冷やした油を吹きかけて冷却する構造(Flow Cooling)と、回転するモータシャフトから遠心力で勢いよく油を噴き出して巻線端部を冷却する構造(Splash Cooling)の外側と内側からの2way 油冷構造によって冷却効率を最大限に高めながらモータの圧倒的な小型化を実現しました。

モータの効率向上には、ステータコアの巻線を高密度にする必要がありますが、高密度化はコイル巻き工程での生産性が悪化するトレードオフに直面します。そのため、巻線部分をカセット化して挿入する高占積率巻線工法(カセットインサータ)という新工法を採用し、高い生産性と高占積率を両立しました。

EVトラクションモータ世界一を目指して量産体制構築を加速

こうした技術や工法の開発により、量産開始から1年の間に「E-Axle」はすでに6車種のEVに採用され、2020年12月時点で約10万台に搭載されました。小型軽量という特徴から車体デザインの自由度が増し、高い運動性能、動力性能、電費性能、静粛性を実現していることから、「E-Axle」を搭載した車種はEV普及で世界をリードする中国でも非常に高い支持を集めています。また、お客様以外からも高い評価を得ており、日本経済新聞社主催の「2019年日経優秀製品・サービス賞」において「最優秀賞 日本経済新聞賞」を受賞しました。
この受賞は、1.技術開発性、2.価格対効果性、3.業績寄与度、4.成長性、5.独自性、6.産業・社会へのインパクトの6項目の観点から総合的に評価された結果です。

エンジンに大小様々な排気量があるように、「E-Axle」も小型車から大型SUVまで世界中のほぼ全ての車両セグメントに対応できるようラインナップを拡充しており、2023年までに5種類の標準製品を量産化できる見込みです(ページ下部関連コンテンツを参照ください)。こうしたスピード感で開発・量産が進められるのは、当社が主要部品を内製できることと、IT・家電業界で培った開発ノウハウやスピード開発の社風があること、自動車メーカーや1次サプライヤーから入社した知見を持つ多くの人材がいること、そしてEVトラクションモータで世界一になるという強い信念をもって社内リソースを集中してきたことによります。

NIDEC トラクションモータシステム「E-Axle」ラインナップ

今後、EVの普及はさらに加速し、2030年には弊社のE-Axle の生産台数は1000万台を超える計画です。NIDECでは2025年を「EVの分水嶺」と捉え、2030年にはトラクションモータで世界シェア40〜45%を獲得することを目標に、研究開発を加速し、世界各地で量産体制構築を急いでいます。

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