ソリューション事例

ブレ補正機構「TiltAC」

NEEDS
手軽にブレなく撮影できるスマートフォンを供給したい
SOLUTION
ジャイロセンサを搭載し撮影モジュールごと姿勢制御するブレ補正機能を提供

アクチュエータを精密制御し
スマートフォンカメラの性能を最大限に活かすブレ補正機構

現在、世界では年間14億台のスマートフォンが出荷されていると言われています。その一台一台にカメラ機能が搭載されており、スマートフォンで日常の光景を切り取ることは、幅広い世代で生活の一部ともなっています。ひと昔前のカメラは、プロ用機材であってもしっかり構えて手ブレを防ぐ必要がありましたが、最近のスマートフォンには強力なブレ補正機能が搭載されており、片手で気軽にシャッターボタンを押しても、ブレのない写真や動画が撮ることができます。

日本電産サンキョーは、ジャイロセンサと連動した振動キャンセル機能「TiltAC」を供給しています。画質の劣化がなくレンズやイメージセンサの性能を最大限に生かせるブレ補正デバイスとして、スマートフォン業界の耳目を集めています。

デジタルカメラやビデオカメラでは、これまでさまざまなブレ補正技術が実用化されてきました。一眼レフカメラなどで長い歴史を持つのはレンズまたはCMOSセンサ(撮影素子)の揺れを打ち消す方向にシフトさせて光軸を像の中心部に維持するOIS(Optical Image Stabilizer)方式です。一方、近年スマートフォンなどへの搭載が増えているのが、撮影された映像の一部領域を切り出すデジタル処理によってブレを補正するEIS(Electronic Image Stabilizer)方式です。しかし、これらの方式は、原理的に画質の劣化が避けられませんでした。OIS方式は、レンズとCMOSセンサの位置関係がブレ補正動作によって理想的な状態から遠のいてしまうため、撮影/画像、映像の特に周辺部分に画像の歪みが発生します。またEIS方式ではCMOSセンサが本来持っている有効画素エリアをフルに生かすことができず、やはり画質の低下につながります。

一方、TiltACは、レンズからセンサまですべてを含むカメラモジュールをまるごと可動部として、ジャイロセンサで傾き変位(角速度)が発生しないようアクチュエータの動作を精密に制御し、カメラモジュールがまっすぐ被写体に向いた姿勢を維持します。そのため、周辺部の画像の劣化もなく、CMOSセンサの性能をフルに発揮でき、高画質の画像/動画を、手軽に撮影することができます。

レンズや撮影素子を一体化させたカメラモジュールごと傾きをコントロールするTiltACは、他の方式に比べて画質の劣化が少ない。
TiltACを組み込んだカメラは、大きなブレ角度とブレ周波数にも対応する。

画質維持に加え、対応できる傾き変位においても、TiltACは他方式を大きく上回っています。OIS方式において実用性を発揮できるのは傾き変位±約1度に止まりますが、TiltACは±6度の大きなブレ角度でもカメラモジュールの傾きを補正します。これにより、走りながらでもブレのない画像/映像を撮影することが可能になり、より一層撮影環境の自由度が高められます。

この革新的なブレ補正技術を生んだ背景には、日本電産サンキョーの精密サーボ技術、VCM(Voice Coil Motor)技術の蓄積があります。VCMは磁石がつくる強力な磁界の中をコイルのみが往復運動するタイプの単相モータで、日本電産サンキョーはフィーチャーフォン(ガラケー)が主流だった時代からVCMを用いたオートフォーカス機構を供給してきました。2011年、この極めて微細かつ精細な加工技術と蓄積した知見を生かせる新市場として進出したのがブレ補正市場でした。

他の方式に比べ大きなアドバンテージがあるものの、競争の激しいスマートフォン市場では品質以外にも厳しい要件があります。筐体内の薄く狭いスペースに搭載するには、カメラモジュールを含めたブレ補正機能全体をできる限り小さくする必要がありますが、マグネットコイルを小さくすれば、動作量を確保するために消費電力が多くなります。両者を満たすベストな条件探しは、ブレ補正機構として供給する限り、続けていかなければなりません。
また、落下や乱雑に扱われることを想定して、150cmの高さから30回落としても、10cmの高さから数万回落としても機能を満足させる衝撃性能、信頼性も要求されており、ハウジングからハンダづけまで、徹底した吟味を行なって要望に応えています。

TiltACの構造。レンズやCMOSセンサを一体化したカメラモジュールをバネやベアリングを用いて固定部分から浮かせる。固定部分の傾きが変わっても、固定部分内のコイルで、可動部の姿勢を保持する。

現在供給しているTiltACは、ピッチ(垂直方向の回転)、ヨー(水平方向の回転)の2軸のブレ補正が可能ですが、ロール(光軸方向の回転)の補正も可能な3軸ブレ補正タイプも開発を進めています。また、望遠レンズは狭い筐体のなかで長い焦点距離を確保するためプリズムを使って光軸を90度曲げてCMOSセンサに導いていますが、現在、プリズムを組み込んだカメラモジュールを搭載できるTiltAC も開発中です。望遠撮影はよりシビアなブレ補正が求められるため、市場の期待も高まっています。

将来、ロボットの分野でも精彩な動きの実現に欠かせないものとして、「ブレない目」のニーズは高まっていくでしょう。また、カメラ用のブレ補正にとどまらず、レーザーモジュールを搭載することも検討しています。レーザーモジュールを搭載したTiltACを自動車のセンサとして搭載すれば、より正確に車間距離などを計測できるようになり、今後の自動運転技術の発展のキーデバイスとなるかもしれません。

Nidec Group Search